「今から警察が来るってよ!?」介護施設でご利用者が亡くなった時の手続きについて
介護施設で人が亡くなる
「ご利用者が息をしていません!!!」

介護の仕事をしていれば必ず遭遇すると言っても過言ではないことです。
介護施設のご利用者は高齢者ですので、当然体調が急変し、施設内で亡くなることもあります。
その時に介護職員が心配することの一つとして、
「警察が来るか来ないか?」
があります。
警察が来ると何が不安なのかと言うと、何をするのか分からない未知に対しての恐怖なんだと思います。
そこで今回は、警察が来るか来ないかの状況説明と、警察が来るときに警察は何をするのか?介護職員はどうしたら良いのか?等を説明します。
結論から言うと、状況によります。
《状況による》
と言うのが一番困りますよね?
でもそうなんだから仕方がない。
ということで、今回はその状況事に説明していきます!
基本的に介護職員向けに書きますが、介護施設入所を検討する際、ご利用者が亡くなった際の手続き等の説明はご家族にされません。
そのため、この機会に是非介護施設入所を検討しているご家族も是非知っておいて下さい。
警察は何のために来るの?
介護施設でご利用者が亡くなった時、どんな時に警察が来るのかを説明する前に、まずは
「何の目的で警察が来るのか?」
を簡単に説明します。
警察は事件性の有無を調べるために来ます。
このように言うと
「と言うことは、私達の事を犯人扱いしに来るんだな!」
と受け止める人がいますが、それは違います。
あくまでも手続きの一つだと思って下さい。
実際に臨場する警察官だって、
「この施設は悪だ!捕まえてやる」
なんて思って来ません。
むしろ、
「はい、事件性はありませんね」
を証明するために来る感じです。
そのため、
「警察が検視をしに来る!」
となっても怖がったり、不安になったり、敵対的な態度を見せる必要は一切ありません。
むしろその逆で、貴方や施設の無実を証明するために来るんです。
警察が来ないケース
<警察が来ない状況>
大半の場合は介護施設でご利用者が亡くなっても警察は来ません。
そのため、まずは基本となる、警察が来ないケースを簡単に説明します。
- 嘱託医や常勤医師がいる環境で定期的に健診を受けている事。
- 持病や最近の体調変化等によって、それが原因で亡くなったと考えられる事
概ねこの両方を満たしている場合に警察は来ません。
考えてみれば当然ですよね?
単発的に来て、状況を調べるだけの警察と、普段から定期的に健康状態を診ている医者。
どちらの方が死因を適切に判断出来るか?
当然、普段から診ている医者です。
医者は死因に関しては警察より専門ですしね。
そのため、普段からご利用者のことを定期的に診ている医者がいる場合には、その医者が判断しますので、基本的に警察は来ません。
<介護職員の取るべき行動>
この場合には施設のマニュアルに沿って行動します。
マニュアルがない場合には、とりあえず施設の看護師に連絡をして指示を仰ぎましょう。
今回は急変ではなく既に亡くなっている場合なので、嘱託医とご家族にも連絡をするのが普通です。
ちなみに、亡くなっているかどうかの判断を介護職員がしてはいけません。
しかし、この連絡をしている流れで医者の判断で救急搬送しない判断はあり得ますので、そのような状況だと捉えて下さい。
既に亡くなっている状態なので、焦っても、早く行動しても、何も変わらないので、焦らず確実に関係各所に連絡をしましょう。
ただし嘱託医を呼んでも絶対に警察が来ないと言い切る事は出来ません。
このような場合でも警察を呼ぶケースとしては、普段から定期的に診ている医者が
「これは変だな?持病と関係ないよ!」
「これは変だな?最近の体調からはあり得ないな!」
と判断すれば警察が入り得ます。
警察が来るケース
<警察が来る状況>
基本的に先ほど言った《警察が来ない場合以外の状況》で警察は来ます。
そのため、少し列挙するなら
- 死因が、持病等と関係ない
- 死因が、最近の体調変化と関係ない
- 気付いた時には亡くなっていた状況
等々です。
上記2個は先ほど言った通りです。
最後の
《気付いた時には亡くなっていた》
と言う状況ですが、多いのは夜勤中。
定期的な巡視の際に、ご利用者が呼吸をしていない事に気付いた。
このような状況ですね。
普段健康で、注視していないご利用者が急に呼吸停止していたと言う状況もあり得ます。
複数人部屋でオムツ交換に入ったら、その隣のご利用者が吐血していたと言う状況もあり得ます。
どちらも実際に経験したことがあります。
<介護職員が取るべき行動>
この場合にはとりあえず救命措置をしますよね。
しかし、その時点で既に亡くなっていると言う状況です。
この場合も基本的には急変時のマニュアルに沿った行動をします。
もしマニュアルがないなら、この場合にもまずは看護師に連絡をして指示を仰ぎます。
顔見知りの嘱託医だけで手続きが終わるわけではないので、警察が来るケースでは、通常は施設長や相談員にも連絡をして来てもらいます。
一人が亡くなっているご利用者のところに居れば良いので、他の介護職員は通常業務をやっていても問題ありません。
警察が来たときに介護職員がやること
警察が来るとき、来ないときが分かったところで、次は、警察が来ることになったら介護職員は
「どのように行動すれば良いのか?」
「何をすることになるのか?」
等の説明をします!
<深呼吸をする>
絶対にやらないといけないことではありませんが、とても重要なことなので、敢えてやることとして入れます。
それは深呼吸をすることです。
別に深呼吸じゃなくても良いのですが、要は一度冷静になると言うことです。
「警察が来る!」
となると、目の前でご利用者が亡くなっていることと相まってパニックに陥る介護職員が多いです。
私みたいな元警察官がいるなら、その元警察官の職員が対応すれば良いことですが、そんな介護職員そうそう多くはないですよね?
だからまずは一端深呼吸をして下さい。
警察は貴方を捕まえに来るわけではないので、大丈夫です。
冷静になりましょう。
<発見時刻を見ておく>
ご利用者が亡くなっているのを発見した時に、その時刻を見てメモしておきましょう。
もう一度言いますが、警察は事件性の有無を調べるために来るので、発見時刻と死亡推定時刻等との整合性を見ます。
そのため、検視時において、時間と言うモノは物凄く大事な要素なので、出来れば発見時点で時計を見てメモしておくことをオススメします。
もちろん、パニックになって見れない介護職員もいます。
その場合、
「怪しい!」
とはならないので、
「時間を見られなかったから怪しまれるのではないか?」
と心配する必要はありませんので、それは大丈夫です。
警察だって
「普通はパニックになって時間なんて見られないよな」
と思ってくれますので大丈夫です。
ただ、出来れば正確な時間が分かった方が警察も助かると言うだけです。
その後、申送りで自分自身も送りやすいですしね。
<警察を待つ>
多くの場合、こちらから警察に通報しなくても、医者なり、救急隊なりから警察に連絡が行きます。
そして、警察から施設に
「○○さんの件について今から伺います」
と連絡が来ます。
そうしたら、宿直さん等を起こして、玄関を開けておき、警察が来るのを待ちます。
<現場保存>
夜勤の介護職員は、発見者はご利用者の近くに待機して警察を待ちましょう。
近くに居るとはいえ、あまりウロチョロしないようにして下さい。
他のご利用者が徘徊して入っていかないように見張りの役目もあります。
何度も言いますが、警察官は事件性の有無を調べるために来るので、現場の状況を動かさない方が無難です。
よっぽど事件性が高くない限り指紋や足跡等鑑識活動はしませんが、実況見分はしますので、床頭台の物とか、ご利用者の靴とかを動かさないようにして下さい。
他の夜勤者は通常業務をこなしていて問題ありませんが、この現場保存の観点から亡くなっているご利用者の近くには行かないようにしましょう。
<実況見分>
警察が来ると、現場に案内をして実況見分が始まります。
世間的には現場検証と実況見分がゴッチャになっている人が多いのですが、これは実況見分です。
実況見分は現場の状況をありのまま記録する作業です。
そのため、令状等は不要です。
一方の現場検証は、事件において令状を発行してもらって行う検証なので実況見分よりも重い手続きですし、既に事件認定されてからの手続きです。
介護施設でのこのケースで行うのは事件性の有無を判断する段階ですので実況見分です。
現場の状況をありのまま記録する作業です。
この際、発見職員は実況見分の立会人をしなければなりません。
警察はご利用者が亡くなっていた居室の間取り図を書きながら、ご利用者のいる位置、姿勢、ベッドの状況等々、様々な物を計測・記録していきます。
立会人は基本的にそれを見ているだけです。
あとは、たまに警察から質問をされるのでそれに答えるのと、写真を撮る時に立会人として写真に写る必要があります。
その写真は実況見分の資料として添付され、警察書類に貴方の写真が残りますが、司法上必要な手続きなので、基本的に拒否は出来ません。
<状況説明>
発見時の経緯説明をします。
慣れている警察が行えば30分以内に終わります。
警察経験がそれなりにないと、そもそも経緯説明を聞く役割を任せられないので、経緯説明を受けることに慣れていない警察官でも1時間以内には終わります。
持病の有無、ご利用者のその日の様子や行動等々ですね。
もちろん、分からないことは
「分かりません」
と回答して構いません。
むしろ、分からないことを見た事実として語る方が問題になり得ます。
<検視>
警察が事件性の有無を調べる状況では必ず検視を行います。
介護職員が検視に立ち会うことはありませんので、その部分はご安心下さい。
恐らく介護職員が検視に立ち会ったら気絶してしまいますしね。
亡くなっているご利用者のエンゼルケア等に慣れているくらいでは警察の検視には耐えられませんので。
検視は警察だけで行い、その内容についての所見を医者が行うという形になっています。
検視は基本的には警察署で行います。
そのため亡くなったご利用者を警察署に搬送します。
よっぽどのことがない限りあり得ないのですが、一応状況的に搬送しない方が良い場合にはその場で検視を行うこともあり得ます。
搬送するとご利用者の骨等の状況が大きく変化してしまう状態だとか、警察署の検視室を現在使っていて使えない状況で、その場で検視を行っても問題ない環境だとか、その場でやる判断をする状況は無数になると思います。
正直、
「どんな時にその場で検視をする判断をするの?」
はこれと言う具体例を示すのは難しいです。
これは稀な例外で、通常は警察署に搬送しますので、
「その場で検視をすることもあるんだなぁ」
と頭の片隅に入れておくだけで問題ありません。
家族からの問い合わせについて
<死亡診断書>
介護職員には直接関係ないことなのですが、ご家族から介護職員に
「死亡診断書ってどうなりますか?」
と聞いてくることがあるので一応書いておきます。
検視後に医者が書いてくれますので、検視等の一連の手続きが終わるまで待ってもらいましょう。
そして、以降の書類関係は警察に問い合わせるように案内して下さい。
ちなみにこれは警察が介入した場合の話ですからね!
警察が介入しないケースの場合は、検視をしませんので、介護施設の嘱託医に書いてもらいます。
警察に問い合わせではなく、介護施設の嘱託医に問い合わせと案内して下さいね。
<死亡届書>
ご家族は死亡診断書とは別に死亡届書が必要になりますが、死亡届の届出用紙は基本的に死亡診断書とセットになっています。
死亡診断書と見開きにくっ付いています。
そのため、死亡診断書があれば自動的に死亡届をする書式も手に入ることになります。
ご家族はその事を知らない人が多いので
「死亡届をする書類が必要らしいのですが頂けますか?」
のように聞かれることも有ります。
介護職員も亡くなった後の書類関係を知らない人が多いですが、ご家族は
「介護職員さんはプロだから知っている!」
と思って聞いてきます。
そこで
「すみません。わかりません。専門外なので」
と回答するよりも、
「死亡診断書と一緒になっていますので、医者から死亡診断書を貰ったら確認して見て下さい」
と適切に回答出来る方が専門家としての役割を果たせると言うか、カッコいいですよね。
ただしこの手続きも基本的に葬儀屋がやってくれますので、ご家族が心配することではありません。
この辺りは今後別記事で、人が亡くなった後に必要な役所的な手続きや書類に関しても記事を書く予定ですので今回はこの辺にしておきます。
<解剖はしない>
書くか悩んだのですが、
《人が亡くなる=解剖》
とか
《警察が介入=解剖》
のように勘違いしている人もいるようなので、一応書いておきます。
ご家族から
「解剖とか、どのくらい時間掛かりますか?」
と聞かれることもなくはないです。
基本的に事件性があると判断されないと司法解剖はしません。
事件性なしと判断されたら、ここまでご紹介した手続きだけで終了となります。
検視が警察署で行われるなら、警察を待つ~終了までで2時間あれば終わります。
そのため施設で警察が活動する時間は実質1時間~1時間30分くらいですかね、
司法解剖をするとなると半日~一日はかかりますが。
最後に
「介護施設に警察が来る!」
これだけでも結構大事ですよね。
警察の立場からしても嘱託医のいる介護施設に検視をしに行くなんて滅多に経験しません。
私が現職時代には、病院での検視経験はありますが、介護施設での検視経験は一度も有りません。
そのくらい警察的にも稀です。
警察でもそうなのですから、介護職員にとっては更に特別なことですよね。
焦らず、分からない事は
「分からない」
とキチンと伝える。
変に意識する必要はありません。
焦らず冷静に対応すれば大丈夫です。
もう一度言いますが、その不安は
《何をするのか分からない未知への不安》
なんですよね。
本記事にてその不安が少しでも解消されたなら幸いです。
「ところで、この記事を書いている貴方はどなた?」
と疑問に思った貴方は私の自己紹介もご覧ください。
私は介護に関してこのように
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