社会福祉士・介護福祉士は知っておくべき、高齢者の権利を守る制度。<成年後見制度の簡単な説明>
高齢者の権利を守る制度
特に重要な制度として、介護福祉士でも、社会福祉士でも、ケアマネでも、全ての試験で出題されるモノに
【成年後見制度(せいねんこうけんせいど)】
と言うものがあります。
聞き慣れない言葉ですし、法学の民法の領域なので、正直難しく、
「将来後見制度を利用した領域の仕事をしたいんです!」
と言う人以外はあまり積極的には勉強しない領域だと思います。
しかし、高齢者の権利を守ると言う意味では主力となり得るとても重要な制度ですので、頭の片隅にでも入れておいて損はありません。
介護職員だけではなく、家族にもとても大きく関わってくる制度ですので、介護に関係する人は全員無関係ではありません!
今回は出来る限り簡単に紹介しますので、一緒に頑張りましょう!
どんな人を、どのように守るの?
<どんな人を守るの?>
高齢者の権利を守ると言いましたが、厳密には、高齢者に限定した制度ではありません。
では、
「どんな人を守る制度なのか?」
まずはそこから見ていきます。
成年後見制度で守れる人は
【物事を判断する能力等がない状態の人】
です。
そのため、若い人でも知的障害や、精神疾患等で物事を判断する能力がなければ活用できます。
高齢者と言うことであれば、認知症の方をイメージして下さい。
通常の判断能力を有していない方いますよね?
「ご飯食べますか?」
と聞いたら
「うん」
と頷く。
即座に
「やっぱり食べるの止めますか?」
と聞いても
「うん」
と頷く。
要は声掛けされれば肯定するような方いますよね?
これは施設内で職員とのやり取りだから問題ありませんが、もしも、これが一人暮らしだったらどうでしょうか?
そのような高齢者は往々として営業職の人に狙われます。
表現は悪いかもしれませんが、何でも肯定するので、どんな契約もポンポン取れてしまうんですよね。
だから狙われやすくなります。
そんな高齢者を守るのがこの成年後見人制度なんです。
<どのように守るの?>
契約と言うのは法的に定められた法律行為です。
そのため、通常は一度締結すると、簡単には解約が出来ません。
それは物事を判断する能力がない高齢者との契約でもです。
しかし、それではあまりに理不尽ですよね?
だって、認知症で何に対しても肯定しちゃう状態で、それを悪用されているわけですから。
そこで成年後見制度です。
なんと、成年後見制度を利用すると、通常では簡単に解約出来ない契約行為を
【こちら側の一方的な意思表示によって簡単に解約可能】
なんです。
もっと具体的に言います。
- 新聞の定期購読
- 保険契約
- 不動産契約
- 遺産相続
- お金の貸し借り
等々。
全部こちらから簡単に解約が可能です。
それまでに支払ったお金も返してもらえます。
と言うよりも、相手は返さないといけないんです。
新聞契約を例に見ると、保護対象の高齢者がその新聞等を捨ててしまっていたり、グチャグチャにしてしまっていても、新聞屋は全額返済しないといけません。
物事を判断できない状態なので、本来はそもそも契約を結ぶこと自体がナンセンスなわけです。
「だから保護しましょう!」
と言うことです。
だから、既に商品を消費してしまっていても、その分は
「そんな人と契約を取った営業者(拡張員)が悪い!」
と言うことなんですね。
どうすると利用出来るの?
クーリングオフ制度のように、誰でも
「この人は物事を判断する能力がないので成年後見制度を利用して解約します!」
という使い方が出来る制度ではありません。
この制度はキチンと前もって手続きをしておかないと利用できません。
ではどのような手続きをしていると利用出来るのか?
それは家庭裁判所に成年後見人の申請をするんです。
具体的な細かい必要書類等は家庭裁判所のサイトに載っていますので、知識として持っていたいだけではなく、本格的に利用を検討している方はそちらを見て下さい。
具体的な手続き方法や必要書類等の説明をすると、この記事の長さが物凄い量になってしまいますのでご了承下さい。
なお、手続きは弁護士や司法書士、行政書士等の法律家に依頼するのが無難です。
料金は事務所によって大きく違いますが、概ね5~30万円くらいのようです。
家庭裁判所で成年後見制度開始が決定され、法務局に
「この人は成年後見制度を使える人ですよ!」
と登録(=登記)されると活用できるようになります。
誰が守るの?
<裁判所が指定する>
何度も、何度も、
「物事を判断する能力がない人を守る制度」
と言っていますが、誰が彼らを守るのでしょうか?
本人は守られる状態にあるわけですから
「その契約解約します!」
と意思表示するのは難しいですよね。
そのため、成年後見制度で対象者を守る人も裁判所で指定されます。
それは親族であったり、弁護士であったり、検察官であったり、後見制度を理解して、キチンと守るために行動できる人になります。
<守られる本人が前もって決めておく>
実は裁判所に決めてもらう以外にも、守る人物を指定する方法もあります。
それは、守られる可能性のある本人が、まだ物事を判断できる元気な間に
「もし成年後見制度を利用するようになったら、誰々に守って欲しい!」
と言う正式な契約を交わしておくんです。
そうすれば本人の指定が優先されます。
これを
【任意後見】
と言います。
これに対して、公的機関の裁判所が決める場合を
【法定後見】
と言います。
こうすると少しは整理出来ますかね?
いきなりこれらの用語を出されても混乱するだけですから、制度を理解した段階で紹介させていただきました。
成年後見制度を登録するとデメリットは?
<物事を判断出来ない証明>
成年後見制度はあくまでも、物事を判断する能力がない状態の人を守る目的の制度です。
と言うことは、逆を返すと、利用出来る状態に登録(登記)しておくと
【=物事を判断することが出来ない人。一方的に契約を解約出来てしまう人】
と言う証明にもなります。
そのため、成年後見制度を利用出来る登録がされている状態では色々と制限が付きます。
だたし、そもそもの話として、
「そのような状態の人には出来ないでしょう!」
と言うことに制限が掛かるだけです。
そのため、正当に活用していれば不具合と言えるような制限ではありませんが。
<特定の行為ができない>
今この記事を読んでいる貴方は、公務員試験や国家資格の試験を受験した経験はありますか?
実は、これらの試験や資格を取得する時に要求される
【登記されていないことの証明書】
と言う書類は、この成年後見人登録がされていないことの証明書のことです。
つまり、成年後見制度の登録がされていると公務員にはなれません。
国家資格も取得できません。
ただ単に
「成年後見登録されている人は公務員になれません!国家資格を取れません!」
と言われるだけだと
「保護されたいなら公務員にはなれないって、メリットとデメリットを天秤に掛けろと言うこと?嫌だなそんな制度」
と感じる人がいるかもしれません。
しかしこの部分、実はそんなことは言っていません。
内容を見れば当たり前なことを言っているだけなんです。
「物事を判断できない人が拳銃を持って警察をしていたら怖くないですか?」
「物事を判断できない人が医師として手術をしていたら怖くないですか?」
と言うことを言っているだけです。
類似制度
<成年後見人が最強!>
介護福祉士や社会福祉士、ケアマネ等のテキストでは、成年後見制度だけではなく、類似制度も一緒に掲載されているため、余計に混乱を招きます。
聞き慣れない言葉だらけで、似た内容だから混乱してしまい、この部分が難しいと感じるのかと思います。
しかし、基本となる成年後見制度を理解した状態の今のあなたなら、きっと混乱しないと思いますので、敢えて類似制度も紹介します。
類似制度とは
【保佐人制度】と【補助人制度】
です。
簡単にそれぞれを見ていきますが、基本的な考え方としては、成年後見制度が一番保護の度合が強い制度で、その他は保護の度合が下がって行くだけです。
保護の度合としては
【成年後見 > 保佐人 >補助人】
となります。
<保佐人>
細かい文言を見ると混乱するので抜きにします。
成年後見人は基本的に一人で物事を判断出来ません。
保佐人は、基本的に一人で物事を判断出来ます。
これだけでもかなり大きな違いですよね。
保佐人は基本的には一人で物事を判断できるのですが、
「家を買うような大きな決定を一人でさせるのは流石に不安!」
と言うように、前もって法律で定めている事に関しては保護できる制度です。
これで何となくでも、成年後見制度との違いをイメージしてもらえれば良いのですが、どうでしょうか?
<補助人>
成年後見人と保佐人は結構大きな違いがありましたので、イメージしやすかったかもしれません。
問題は保佐人と補助人の違いです。
補助人は保佐人よりも保護の度合いが弱くなります。
そのため、保佐人と同じで、基本的に一人で物事を判断できます。
保佐人は前もって法律で
「このような時に守りましょう!」
と言う項目が決められています。
補助人はかなり一人で物事を判断出来るので、前もって
「このような時に守りましょう!」
と言うことが決められていません。
「これは守るべきことかな?」
と裁判所に判断を求めて決定します。
そのため、ほぼほぼ普通の人と大差はないと言うイメージですね。
「若干、普通の人よりも守られるケースが多いこともあるかな?」
くらいのイメージです。
最後に
いかがでしたか?
一つ一つを見ていくと、最初の拒否反応を持っていた時ほど難しいことでもないと思います。
テキストには載っていないので、余談でいいのですが、実はこの保護の制度にはもう一つ類似したモノがあります。
それが【未成年者】です。
知的障害者施設とか養護施設で未成年者を対象とする介護職員等にはむしろこちらの
【未成年者保護】
の制度の方が重要かもしれません。
【未成年者は犯罪をしても守られる】
と言う部分をイメージする人が多いかもしれませんが、ここで言っているのはそれとは違います。
成年後見人と類似した保護の制度として未成年者保護を指しています。
上記は刑法上の話です。
成年後見関連の保護は民法の話です。
法律が根本的に違います。
その保護の強さは成年後見人と同等、又はそれ以上の強い保護になります。
試験の範囲としては行政書士と言う法律家の試験範囲になってしまいますが、
「こんな保護制度もあるんですよ!」
という紹介だけしておきます。
恐らく私のブログを試験勉強目的で読まれている人は少ないと思いますが、これで試験に出たら1点儲けモノですね!
なお、合格率10%以下の法律家資格の勉強経験もある私の、試験勉強の方法やテキストの選び方等に関しては
をお読み下さい。
多くの受験生が
「難しい!わけわからない!」
とゴチャゴチャになり混乱してしまう内容を最後まで読まれた貴方は凄いと思います!
胸を張って自信を持って良いほどのことだと思います!
介護職員は本当は凄いんですよね!
そんな
「凄い介護職員!」
と言う記事は
に掲載していますので、そちらも併せてお読みください。
「ところで、この記事を書いている貴方はどなた?」
と疑問に思った貴方は私の自己紹介もご覧ください。
私は介護に関してこのように
◎、曖昧なまま使われている部分
◎、時代の変化についていけるような情報
◎、介護に対するやる気の向上
等に関する情報を出していきますので、是非また来てくださいね。
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