世界初となる認知症治療薬『レカネマブとは?』をわかりやすく説明します。

2023年10月30日

 2023年9月、世界初となる認知症治療薬レカネマブが日本でも承認されました。

 >>>エーザイ『「レケンビ®点滴静注」(一般名:レカネマブ)について、日本においてアルツハイマー病治療薬として製造販売承認を取得』へのリンク

※本記事で認知症と表現しているモノは全てアルツハイマー認知症のことを指します。

 これを受けてネット上では賛否両論、色々なため

「結局これは何なの?今までの認知症薬と何か違うの?」

「大々的に取り上げられているけど、何か凄い薬なの?」

「難しいことはどうでもいいから、認知症が治る薬なのか?治らない薬なのか明確に教えて。」

のように困惑する声が聞かれます。

 

 そこで今回は

『世界初、認知症治療薬レカネマブとは?』

についてわかりやすく説明していきます。

 この記事を読むことで

◎、認知症治療薬周りの状況を理解できます

◎、認知症を必要以上に恐れないで済むようになります

 それでは、認知症治療薬レカネマブについて一緒に見ていきましょう!

私は薬剤の専門家ではありません。あくまでもネット上で取得できる情報を元に理解をし、それをわかりやすく噛み砕いているだけですので、あらかじめご了承下さい。

世界初の認知症治療薬

<認知症治療薬レカネマブ>

 レカネマブは世界初となる認知症治療薬で、

『アミノイドβという特殊なたんぱく質を除去する』

という効能を持つ薬です。

 このように聞くと貴方は

「ちょっと待って!これが世界初となる認知症治療薬なの?今までも認知症薬ってなかったっけ?」

と疑問に思いますよね?

 その辺りについて少し説明をします。

<今までの認知症薬と認知症治療薬の違い>

 今までの認知症薬は”治療薬”ではなく、”症状遅延薬”でした。

 と、これだけではまだ

「だから、なにが違うんですか?」

とモヤモヤする人がいると思いますので、それぞれを整理します。

 

 ザックリ言うと

◎、症状遅延薬(今までの薬):認知症の原因を除去は出来ない。無理矢理症状の進行を抑えるだけ。

◎、治療薬(レカネマブ):認知症の原因を除去する。

です。

 インフルエンザで例えるなら、高熱が出たときに高熱を抑える解熱剤を飲んでもインフルエンザウイルス自体は排除できませんよね。

 高熱の不快感や体の負担を軽減するだけの対処療法です。

 これと同じ立ち位置の薬が、今までの遅延薬です。

 

 一方、インフルエンザウイルスを除去する薬もあります。

 ウイルスが体から排除されればインフルエンザそのモノが治ります。

 これと同じ立ち位置の薬が、今回の治療薬です。

<「これで認知症が完治するの?」「どの程度の効果があるの?」>

 認知症野根本治療薬が出てきたということで

「やった~!これで認知症は治るようになったんですね!凄い!!!」

と喜ぶ人もいるかもしれませんが、ちょっと待って下さい。

 実は今回のレカネマブで認知症は治りません。

 原因物質を除去して、進行を遅らせるくらいの効果しかないようです。

 

「えっ!?だって根本治療薬って言ったじゃないですか!?嘘だったんですか?」

と思うかもしれませんが、嘘ではありません。

 ただ、今回の薬には

『完治まで導くだけの強い効能はない』

という状況なんですね。

 確かに根本原因の一つを除去する効能はあるけれど、その全てを除去できるほどの力はない。

 つまり、まだまだ産まれたての未熟なお薬というわけです。

 どの分野でも言えることですが、最初から完璧なモノなんてありません。

 まずはその第一歩目というだけなんですね。

<どんな人に効果的なのか?>

 更に、除去できる人は限られているようです。

 具体的には

『認知症の初期段階の人』

のようです。

 認知症と一言でいっても、実は段階が幾つもあるんですね。

 最初期は点のような状態。

 次は点が集まって線。

 次は線が集まって繊維。

 繊維が集まって面。

 面が集まって、斑点

のような感じです。

 

 今回の治療薬はこの中でも線~繊維くらいの状態の人に効果がある薬のようです。

 この状態だとまだ人によっては認知症の症状は感じられないくらいの状態ですかね。

 そのくらい初期症状の人にしか効果がないみたいなんですね。

 認知症治療薬レカネマブについてまとめると

◎、認知症の原因物質とされるアミノイドβタンパク質を除去する

◎、完治はしない(結果的に症状を遅らせるだけ)

◎、除去できるのは症状のないくらいの初期の人限定

と言う感じです。

 

 いかがでしょうか?

 これだけ見ると

「全然意味ないじゃん!使えないなぁ~!期待させないでよ、もぅ~!!」

との声が聞こえてくるのも納得の内容ですよね。

 ではなぜこの薬はここまで騒がれているのでしょうか?

 

 実はこの薬の効果以上に大きな功績が別にあるからなんです。

 その辺りについても少し見ていきましょう。

認知症治療薬レカネマブの功績

 ほとんど使い物にならないとの感想を持たれるレカネマブの大きな功績とは

『アミノイドβが認知症の原因物質だと証明したこと』

です。

 古くから認知症の原因は、アミノイドβと言うたんぱく質が脳に付着し、長年かけてその部分を破壊していくとされてきました。

 そして、今でもそれを基礎として認知症治療薬の開発が世界中でされています。

 

 しかし近年は

「本当にそれが原因なの?もっと他にあるんじゃないの?」

という論評が出始めていました。

 もしもこのたんぱく質が原因物質ではないとなった場合、今現在も世界中で多く研究されているアミノイドβ除去による認知症治療が白紙に戻ってしまいます。

 そのため、多くの研究者は

「もしかして、自分達のやっている研究は無意味なことなのではないか?」

と不安な気持ちを抱えていたようなんですね。

 

 しかし、今回のレカネマブによって

「アミノイドβを除去することで認知症の症状に良い影響が出た。」

「認知症の原因物質はアミノイドβだった」

ということが証明されたわけです。

 今まで認知症治療の研究を進めていた研究者達に

「やっぱり、自分達のやってきたことは無駄じゃなかったんだ。信じて突き進もう!」

と夢と希望をつながせることが出来たんですね。

 

 これがレカネマブの最も大きな功績と言われています。

 何もわからないところを手探りで模索するのと、道筋が分かって能力向上に向けて動くのとでは、進化速度は雲泥の差ですからね。

 この方向性で2023年中には東京大学の研究チームも一通りの研究結果を出し、2025年には新たな認知症治療薬を出すと言っています。

 これもレカネマブがなければ、消滅していたかもしれないモノの一つなんですよね。

 まさに認知症治療研究の希望、救世主と言っても過言ではない功績を残した薬なので、ここまで注目を集めているんですね。

 認知症者・使用者ではなく、研究者にとって意味の大きな薬と言うイメージですね。

今後の課題

 では最後に、レカネマブをキッカケに生まれた認知症治療薬の今後の課題について軽く触れて終わりにしたいと思います。

 結論としては

『効能向上とお金』

です。

<効能向上>

 先ほどからお伝えしている通り、レカネマブはまだまだ赤ちゃん。

 まだ認知症を完治させることは不可能ですので、完治させられるくらいまで効能を向上させてもらわないと、使用者側の目線では全く意味がないんですよね。

 

 あと、効果の出る対象者の幅も広がって行かないと意味がないですよね。

「認知症が完治します!症状の出ていない最初期の人だけですけどね。」

では、やはり期待するモノとは違いますからね。

 私達利用者側が求めている認知症治療薬とは

「認知症の人は、既に介護施設に入所するレベルに症状が出ている人でも治りますよ!」

ですからね。

 なんなら欲張りな人だと

「脳の機能も回復しますよ!」

まで求めていますよね。

 

 凄いことだろうと、研究者の希望だろうと、使用者にとってはこのレベルに達してくれないと

「使えない薬だなぁ!」

なんですよね。

<お金の面>

 新薬の最初期はどうしてもお金が掛かります。

 これは開発に掛かる人件費や研究費も上乗せされていますし、市場原理の需要と供給の関係もあるので仕方がない部分です。

 人件費等も上乗せされているため、鍵を差し込んだ瞬間に価値が3割減少する日本の不動産価格と一緒ですね。

 どのくらい掛かるのかと言うと一人当たり、年間約350万円だそうです。

 月約30万円。

 2週間に一回与薬する薬なので

『一回で約15万円』

お金がかかる計算ですね。

 これを保険適用にすると1~3割負担なので、実質的な負担額は

15000円~45000円

くらい。

 月計算にするとこれの倍額なので、現在広く普及している認知症遅延薬のアリセプトと大差ない金額ですね。

 

 ただし、アリセプトのような対処療法薬ではなく、根本治療薬に関しては世界中で研究開発が進んでおり、次々と新薬が登場してくると考えられます。

 そうなると、市場作用としては価格はドンドン下がっていきますので、今後はもっと安く認知症治療が行えるようになっていくと思われます。

 そうなれば

「こんな使えない薬に高額の税金を使うなよ!」

という多くの国民の怒りも解消されていきます。

 そして、現在認知症による経済損失は日本だけで年間15兆円を超えるとも言われていますので、高性能な治療薬が誕生すれば、国の負担が更に減って、経済も少し上向くことすら有り得ますね。

 

 この辺り、認知症治療薬に関しては

◎、高性能化

◎、価格

には是非とも注目していきたいところですね。

 今回は以上になります。

 

 この動きに合わせるかのように日本政府が認知症治療の研究分野に対し

「緊急性の高い、早急に押し進めるべき研究だ!」

と100億円以上もの予算をつぎ込む動きを見せ始めました。

 この辺りの動きも含めて、認知症治療に関する全体像はこちらの記事をご覧ください。

 >>>2024年は認知症治療が一気に加速する。日本政府の動きをわかりやすく説明します。

最後に

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