『介護における尊厳とは何か?』誰にでもわかるくらい簡単に説明します。

「尊厳を守る介護をしましょう!」

介護の世界で耳にタコが出来るくらい何度も、何度も聞く言葉です。

 では、その守るべき尊厳とは一体なんですか?

 だって、自分の中で具体的に何なのかを明確に意識出来ていないモノを

「つべこべ言わずに、何でも良いから守った介護をしろ!」

なんて言われても無理に決まっていますからね。

 

 しかし、これだけ大切だ!大切だ!と昔から叫ばれていても

「尊厳とはこれです!」

と明確に言葉にすることが出来る人は少ないですよね。

 そこで今回は

『介護における尊厳とはなにか?』

これを忘れず、常に実践の場で活用できるくらい簡潔明瞭に、わかりやすく説明します。

 この記事を読むことで

◎、介護における尊厳とは何なのかを実践的に自分の中で理解することができます

◎、ご利用者と接する上で、何を守るべきなのかわからなくなった時に、大切な部分を見失わないで済みます

 そんな、介護における尊厳とは何なのかを一緒に見て行きましょう!

※ここで言う尊厳とはあくまでも実際の介護の場、本物の人と接する場での尊厳です

※そのためテストや試験で点数を採れる模範解答ではありませんので、ご了承ください

①尊厳とは

 まず最初に結論を言います。

 介護における尊厳とは

『人が大切にしているモノのこと』

です。

 ここで言う”モノ”とは、者も、物も、形にない心等の存在も、全て含みます。

 その人が大切に思っている存在全てが尊厳です。

 

 つまり尊厳を守る介護とは、ご利用者が大切に思っている存在全てを傷付けないで、大切に接する介護のことです。

 人権がどうとか、人格がどうとか、自尊心とか、そんな難しい言葉で誤魔化さないでください。

 ご利用者が大切に思っているモノ全てが尊厳なんです。

「全てって言われても、範囲が広すぎて、いまいちイメージが湧かないです!」

という人も多いでしょうから、具体例を見て行きましょう!

②具体例

<尊厳①:人としての自分>

 人としての自分という部分(自尊心等)は、この記事を読む前の貴方の中に存在していた尊厳に一番近いモノだと思います。

「貴方がやると仕事が増えるからやめて!全部こっちでやるから触らないで!!!」

 こんな言葉をご利用者に掛けている風景を、一度は聞いたことがあるんじゃないですか?

(特に業務に追われている事の多い特養なんかだと)

 

 これって言われているご利用者としては、

「貴方なんて必要ない。邪魔な存在なので消えて下さい。」

と言われているようなモノです。

 どうでしょうか?

 もしも貴方が先輩や上司、または親などから本気でこのように言われた場合、凄く傷つきませんか?

 このように言われて

「何でそんな酷いことを言うの!?私には何の価値もないってこと?」

と落ち込むその気持ち!

 その状態こそが尊厳を傷つけられた状態です。

 

 この”人としての自分”という部分は、心の面での大切にしているモノ(=尊厳)です。

 このように私達にも尊厳はあるんです。

 介護を受けるご利用者だけのモノではありません。

 このように自分の尊厳という目線で見られるようになると、介助時に尊厳を傷つけないで済むかもしれませんので、是非覚えておいてください。

<尊厳②:家族>

 介護における尊厳ではどうしても心や人権・人格という部分にばかり目が行きがちです。

 しかし、大切な存在全てが尊厳ですので、当然

『(ご利用者の)家族』

も守るべき尊厳になります。

 

「○○さんの家族って施設に預けたら預けっぱなしで、全然面会に来ないよね。そのくせ、文句だけは言ってくるし、正直面倒な家族。」

なんて、職員同士で言い合っていませんか?

 実はこれもご利用者の尊厳を傷つける行為になります。

 だって、その家族は職員にとっては面倒な存在だとしても、そのご利用者にとっては大切な存在なんですから。

 その大切な存在を馬鹿にされ、邪険にされているという事は、尊厳(大切な存在)が傷つけられていますよね。

 

 これも貴方で考えるなら、貴方の周りの人から

「えぇ!貴方も、貴方の相手(配偶者・恋人等)も、二人とも介護職なの?なんでそんな仕事をしている人とと一緒にいるの?あり得ないんだけど!?」

なんて言われたらどうでしょうか?

 貴方が大切にしている人も、貴方が大切にしている介護という仕事も、両方馬鹿にされていると感じてムカつきません?

 そのムカつく状態こそが、尊厳が傷つけられている状態です。

 ご利用者の家族のことを安易に悪く言うのはそれと同じことをしているわけですから、尊厳を傷つけてしまっていますよね。

<尊厳③:シルバーカーの中にずっと入れてある腐ったミカン>

 ここまで見てきた例は比較的すんなりと受け入れやすい例えでした。

 では最後に

『シルバーカーの中にずっと入れっぱなしで、腐ってしまっているミカン』

はどうか見てみましょう。

 ミカンじゃなくても良いのですが、シルバーカーの中に大切に保管しており腐った食べ物ってありますよね。(特に施設だと)

 それは果たして尊厳として守るべきモノになり得るのでしょうか?

 答えは、イエスです。

 それもそのご利用者が大切にしているのなら、守るべき尊厳です。

 

 そのため、安易に

「何このミカン!?腐ってんじゃん!カビが広がる前に捨てるよ!」

と、そのご利用者の目の前で無造作にゴミ箱に捨ててはいけません。

 このミカンも先程の家族の例と同じで、職員にとって迷惑だったり、ゴミだったりしても、そのご利用者の世界の中では大切なモノなんです。

 それを馬鹿にされたり、邪険にされたりしたときには同じように傷つきます。

 

 例えば、貴方が一人暮らしをする際に親から貰った食器や布団等。

 社会人になってから5年以上経った今でも使っているなんてモノはありませんか?

 それらを職場の先輩から

「なにそれ?汚いし、ゴミみたい。新しいの買ってやるよ!」

と目の前でゴミとして捨てられたらどう思いますか?

 悔しいですよね?泣きたいですよね?

 ご利用者も同じです。

 他人から見てゴミだとしても、その人にとって大切ならそれは尊厳なんですね。

 腐ったミカンだからという理由だけで、何も考えずに捨てるのは一旦やめておきましょう!

③守るべきモノ同士が対立した場合は?

<尊厳を守る vs 実害を回避する>

 このように見て来て一つ疑問が湧きませんか?

 それは

「自尊心や家族は理解できますし、大切にしているモノを捨てられたら傷つくのもわかります。」

「でも、介護職員として衛生上そのままにしておくわけにはいかない腐ったミカンはダメでしょう?」

「それをそのまま放置して、ご利用者が食べてしまい、健康被害が出る方が問題でしょう!?」

「尊厳を守るために、健康被害を起こすかもしれない部分を見過ごせってこと?」

という疑問です。

 

 その疑問はごもっともです。

 このように尊厳を守るという部分を意識していると必ず

『尊厳』vs『実害が出ないようにする』

の対立が起きます。

 この問題が発生した場合の私の見解は、

『尊厳を守りつつ、実害が出ないように対応する』

です。

 つまり、

「腐ったミカンを大切に持っていたら、職員側で大切に引き取りましょう!」

という事ですね。

<両立させるにはどうしたら良いのか?>

「ちょっと待って!でも腐ったミカンでも大切にしていたら尊厳なんですよね?職員が引き取ったら尊厳を傷つけるじゃないですか!さっきと言っていることが違いますよ!」

との声が聞こえて来そうですが、私は矛盾したことは言っていませんよ。

「その腐ったミカンを尊厳として”大切に扱いながら”、職員で引き取りましょう」

と言っているんですね。

 

 恐らく今の貴方は

『腐ったミカン=ゴミ』

との認識しか持っていないから

『職員で預かる=ゴミとして捨てる』

との発想になってしまっているんですね。

 しかしそうではなくて、

「ご利用者が大切にしているモノ(腐ったミカン)を、ただのゴミとして扱うことを問題だ!」

と言っているだけなんです。

 そのため、職員も腐ったミカンを大切なモノとして扱いながら、譲り受ければ良いんです。

<介護職員が磨くべきスキル>

  では

「具体的に、どのように引き取れば良いのか?」

 その部分は、ご利用者と貴方との普段からの関わり方や関係性、貴方のスキルによってやり方が変わります。

 そのため、私から具体的にどうこうは言えません。

 とはいえ、それだけではとても不親切なので、具体的に私はどうやっていたかを簡単に紹介すると、ご利用者に対して

「このミカン美味しそうですね!一個貰っちゃダメですか?」

「これとても綺麗だから食べるのはもったいないですよ!乾燥させて飾って皆に見てもらいましょうよ!」

等々、方法は幾らでもあるんですね。

 私が現職のときは、こんな感じでほぼ問題なく行けました。

 

 もっとも、

「自分が大切にしているモノを、貴方にならあげても良いよ!」

と譲ってもらえるくらいの関係性を構築していないと、これらの文言を真似するだけでは無理ですけどね。

 もしもこの部分で

「どうしたら良いんだろう?」

と悩む人は、そこを磨くべきですね。

 そここそが、介護職員が身に着けるべき”本当のスキル”ですからね。

 

 トランスのやり方とか、食事介助のやり方とか、トイレ介助のやり方とか、そんなものは介護職員の特別なスキルでも何でもないんですよね。

 そんな形だけの技術なんて、やれば誰でも勝手に身についていく”ただの作業”です。

 と、その辺りの話は長くなってしまうので、また別の機会にしましょう。

 ともかく、このように普段からのご利用者との関わり方や配慮一つで、尊厳を守ることと、衛生面を守るために尊厳を排除しなければならない対立問題の両方を守りつつ解決することは可能なんですね。

 

 是非、尊厳(ご利用者が大切にしているモノ)を守る介護を意識してみて下さい。

 きっと貴方の、介護との向き合い方が大きく変わっていくことでしょう!

 尊厳を理解できたところで、

「ところで、福祉とか、介護ってそもそも何なんだろう?」

という疑問も持っている貴方はこちらの記事をご覧ください。

>>>『福祉業としての介護とはなにか?』をわかりやすく簡単に説明します。

まとめ

 今回は介護における尊厳について

①、尊厳とは

②、具体例

③、守るべきモノ同士が対立した場合は?

という流れで見てきました。

 

 これで介護における尊厳とは何なのか?を実践的に自分の中で理解することができましたよね。

 ご利用者と接する上で、何を守るべきなのかわからなくなった時に、大切な部分を見失わないで済みますよね。

 是非今日からでも実践してみて下さい。

 

「ところで、この記事を書いている貴方はどなた?」

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>>>ふたひいとは何者?

 

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