余命宣告を受けたご利用者の命を救った介護の奇跡
介護の奇跡とは

介護の奇跡とは正式な言葉があるわけではありません。
介護職員が起こす奇跡のことを私が
《介護の奇跡》
と勝手に命名して呼んでいるだけです。
具体的にどんな奇跡があるのか?
要介護度5、つまり生きるためには手厚い介護が必要な状態の人です。
喋る事も、寝返りも、食事も、排泄も一人では出来ない。
このような方が歩けるようになる等が介護の奇跡です。
病院では回復しないと判断されるようなご利用者を自立生活が出来るレベルにまで回復させてしまうような奇跡。
これを起こせるのが介護職員だけです。
まさに奇跡ですよね。
だから私は
《介護の奇跡》
と呼ぶんです。
今回は2020年1月1日に偶然私が起こした介護の奇跡の詳細をご紹介します。
「介護って凄い!素晴らしい仕事だ!」
少しでもそのように思って頂けたら幸いです。
余命宣告を受けたご利用者
<余命宣告>

厳密には正式な余命宣告ではなく、
「あと2~3日、長くても数日ですね」
と会話の中で医師や看護師が言っていた状態です。
そのご利用者がどんな状態だったのか説明します。
<余命宣告前の状態>

経口摂取、つまり口からご飯をほとんど食べられなくなっていました。
常時眠気が強いことと、口が開かない状態。
無理矢理口にご飯を詰め込むわけにはいきませんし、無理なくいつも欠食か、食べられても数口。
呼吸は常にイビキをかいているような
「がぁ~がぁ~」
という呼吸。
睡眠は目を閉じている時もあるけれど、その多くは半目を開けているか、完全に開いている状態。
もちろん、呼吸は常に
「がぁ~がぁ~」
です。
そんな状態が数ヶ月間続きました。
<余命宣告を受けた日の状態>

2020年1月1日の日中です。
食事は数日間一切摂取出来ていない状態で、点滴のみでした。
その日、呼吸が急変。
今までは
「がぁ~がぁ~」
はあっても呼吸はゆっくり深く出来ていました。
しかしその日は努力呼吸。
つまり肩で呼吸を始めました。
これは短距離走を全力で走った後の呼吸をイメージして貰えれば良いと思います。
とても浅く、速い呼吸で苦しい時の呼吸の事ですので
「はぁはぁはぁはぁ」
と言う呼吸です。
目線も焦点が合わず、半分白目を剥き始めました。
そこで往診時に医師と看護師で
「あと2~3日、もって数日だろうね」
と言う事になり、ご家族には
「そのくらいの期間で覚悟をしておいて下さい。」
と連絡を入れた状態になりました。
介護の奇跡を起こした介助
<何となくの思い付き>

そのような状態で私はその日、そのご利用者がいるフロア担当の夜勤でした。
そのご利用者は当然欠食でした。
他のご利用者の夕食介助を終えて、臥床介助も終え、排泄介助に入ります。
最後に余命宣告をされたご利用者のオムツ交換に入りました。
そこでふとこんな考えが降ってきました。
「このイビキみたいな呼吸って舌根沈下(ぜっこんちんか)かな?舌根沈下なら横向きの安楽の姿勢で良くなるんじゃない?」
と。
舌根沈下とは意識が無くなった状態の傷病者が舌の筋肉を支えられなくなり、舌が気道を塞いでしまい、窒息する状態のことです。
そして安楽な姿勢とは、別名回復体位とも言い、とても楽な姿勢のことです。
<危険と安楽のせめぎ合い>

介護現場では、一人では寝返りをうてないご利用者には基本通りの安楽の姿勢にすることはまずありません。
何故なら、横向きの安楽の姿勢をキッチリと行うと、うつ伏せになり、窒息死のリスクを高めるからです。
実際に私もうつ伏せになってしまい窒息死してしまったご利用者を知っています。
更に、普通は余命宣告されている人に新たな試みをすることはしません。
負担になり得るからです。
しかしこの時は、
「このまま苦しい最後を迎えるのは辛いだろうなぁ」
と思い、
「どうせ数日なら少しでも楽になって欲しい。」
と、苦しまないようにという観点で安楽な姿勢を試してみる事にしました。
<安楽な姿勢>

私はイラストが書けないので、横向きの安楽な姿勢は検索してみて下さい。
一応文字で説明すると、
横向きの安楽の姿勢。
大きな抱き枕を抱いて貰います。
肘と膝の角度は90°になるようにします。
体の傾き方も出来るだけ90°に近い状態で保持して貰うために背中にクッションを当てて体を支えます。
介護関係者にしか分からないかもしれませんが、肩抜きはしません。
肩抜きをするとこの角度を保てないからです。
この姿勢にすることがどれだけ怖いことか、介護関係者ならご理解いただけるかと思います。
普通はやらないことです。
うつ伏せになってしまい、窒息死してしまうリスクが容易に目に浮かぶレベルの姿勢です。
しかし、このご利用者はその姿勢がシックリはまり、左右どちら向きでもうつ伏せにならず、安定しました。
すると驚きの変化を見せました。
余命宣告されたご利用者がどうなったか?

何となくの思い付きで行った安楽な姿勢。
それをした瞬間から
「がぁ~がぁ~」
と言う呼吸が無くなりました。
なんと!鼻で呼吸をするようになりました。
短距離走を全力で走った直後と同じレベルの苦しい状態が、瞬間で鼻で呼吸できるようになったことに私も驚きました。
常に開いていた口は閉じ、呼吸は落ち着いたままで安定。
目を閉じ、朝まで爆睡。
あまりに呼吸が穏やか過ぎて
「生きているよね!?」
と何度も呼吸確認をしたくらいです。
恐らく、今までは呼吸が苦しく、目を閉じて眠ることも出来ていなかったのかもしれません。
それが即入眠、朝まで良眠。
朝食時には目はパッチリ開き、呼吸も安定したまま。
なんと朝食を半分以上も召し上がりました!
もう一度言いますが、このご利用者はここ数カ月、点滴が主で、何も食べられない状態でした。
それが食事を半分以上召し上がるって、もう感動以外の何物でもありません。
記事を書いている現時点はそこから数日経過していますがその後も、この姿勢だと呼吸は安定されており、夜間は目を閉じて良眠が続いているようです。
そしてキチンと眠れていることが理由か、食事も欠食することなく全て半分以上召し上がる事ができています。
まだ結構若いご利用者なので、ご飯をキチンと食べられるようになれば回復すると思います。
これは恐らく老衰ではなく呼吸苦と睡眠不足。
「これが衰弱の原因では?」
と個人的には思います。
老衰ではなく、呼吸苦と睡眠不足が原因でご利用者を亡くすところだったと思うとぞっとします。
死生観と尊厳死の観点
<尊厳死の観点>

私のこの行動は一種の尊厳死の観点からの発想です。
尊厳死とは、無理な延命よりも本人が苦しまないように、自然で穏やかな死を迎えてもらうと言う考え方です。
たまに勘違いされやすいものに安楽死があります。
安楽死は自然な死ではなく、他人が命を奪う行為ですので全く観点が違います。
その上で、今回の私の判断は尊厳死に近い観点です。
そのような価値判断を出来た理由は明らかで、
『普段から死生観の勉強をしていたから』
です。
<介護職員には死生観が重要>

私はこれまで死生観が介護職員には大切だと主張してきています。
特にツイッターでは頻繁に主張し続けていますので、興味がある貴方はツイッターのフォローを検討下さい。
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私がもしも
《死とは何か?》
と言う死生観を勉強しておらず、
「何となく余命宣告されたご利用者」
という対応のままだったら、このようなチャレンジはしなかったと思います。
このようなことをしなければこのご利用者は
『苦しい状態のまま不本意な最期』
を迎えていたと思います。
とても不幸な人生の最期になるところでした。
<今のターミナルケアでは介護の奇跡は起こせない>

私のこの行動は現在の介護業界で浸透している医療目線で構築されている現在のターミナルケアだけでは無理でした。
そりゃそうですよね?
だって医療目線では起こせない、介護だからこそ起こせる奇跡を
《介護の奇跡》
と呼んでいるわけですから。
介護が介護の目線で判断し、行動しないと介護の奇跡は起こせません。
今回の奇跡を起こせたのは間違いなく
《死生観》
の勉強のお陰です。
だから介護職員には死生観がとても重要だと私は考えます。
最後に

今回このような話をしたのは
「私って凄いでしょ!?」
と自慢したいわけではありません。
そうではなく
「介護って凄いでしょ?これはやりがいを感じると思うでしょ?」
「私以外にもこんな介護の奇跡を起こしている介護職員が一杯いるんですよ!」
「介護の仕事の凄さが少しは分かってもらえました?」
と世間に知って欲しいこと。
そして、介護職員向けにも
「貴方もこのような介護の奇跡を起こせるようになりたくありませんか?介護の世界にいる時点で貴方次第で起こせるようになるんですよ!」
と言うことを言いたいんです。
介護の世界にいる時点で貴方は介護の奇跡を起こせる場所に立っているんです。
あとは、介護の奇跡を起こせる人間になるか、惰性で仕事をして一生奇跡を一度も起こせないまま終わるのかを選ぶのは貴方自身です。
もしも奇跡を起こせる人間になりたいなら様々な事を学び続ける事です。
もし
「いきなり読書を始めるとか、勉強するとかは辛い」
というなら、私のブログ記事を沢山読むところから始めてみても良いと思います。
気持ちだけで、何も行動しないのが一番何も生みだしません。
なお、もし記事を拡散していただけるなら、
#介護の奇跡
としていただけると分かりやすいかと思います。
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