介護現場での事故防止。ヒヤリハットと事故報告書の関係性と違い。

あずみの里訴訟は介護事故の一つ

 介護に関連する訴訟の一つに

《あずみの里訴訟》

というものがあるのはご存知でしょうか?


「日本の介護現場が崩壊してしまう!」

と大々的に騒がれた事件なので、貴方も名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。


 訴訟で争われている争点はともかく、おやつ介助中にご利用者がおやつを詰まらせて亡くなったと言う内容です。


 つまり、(事件かどうかは一端置いておき)内容だけ見るといわゆる介護事故になります。


 なお、あずみの里訴訟で争われている内容や、介護が崩壊するのか?しないのか?等の詳細についてはこちらをお読みください。


【「日本の介護が崩壊する!?」法学が分からない人にも分かりやすく、あずみの里訴訟を中立な立場で解説します。】


 このように介護現場で事故が起きると事故報告書と言うモノを作成します。


 今回は、このように介護現場で事故が発生した時に作成する事故報告書と、それに類似しているヒヤリハット報告書。


 更には、

「それらには一体どのような意味があるのか?」

まで解説していきます!




悪い芽は小さいうちに早く摘んで安全に!

 ヒヤリハットや事故報告書を作成し、安全対策の委員会で再度検討までしている理由はこれです。

《悪い芽は小さいうちに早く摘んで安全に!》

と言う事です。


 この事故報告書屋ヒヤリハットを作成する考え方はこうです。


 1件の重大事故が発生する背景には、29件の軽微な事故の放置がある。

 29件の軽微な事故の背景には、300件の危険要素の放置がある。


 そのため、重大事故を減らすためには、背景にある軽微な事故を減らす事。

 軽微な事故を減らすためには、背景になる危険要素を減らす事。

 つまり言い換えると、危険要素を減らせば重大事故が減らせると言う事でもあります。


 これが介護現場で導入されている安全対策の考え方です。




ヒヤリハット報告書と事故報告書の違い

<どの段階かによって違う>

 ここまで言えば勘の良い貴方は察しがついていると思いますが、下図において、


 危険要素を発見した時に作成するのが《ヒヤリハット報告書》

 軽微な事故と重大な事故の時に作成するのが《事故報告書》

となります。


 もっとも重大な事故の場合は、テンプレートとして存在している事故報告書ではなく、キチンとしたレポート用紙に作成するような報告書として作成する施設も多いですが。


 危険要素時点でヒヤリハット。

 それ以上の事故で事故報告書。


 これらを作成する段階と違いが分かったところで、次はそれぞれ、

「危険要素とはどんな事?」

「軽微な事故ってどんな事?」

「重大な事故ってどんな事?」

の具体例を簡単に見ていきます。



<危険要素の具体例>

 いわゆるヒヤリハットの具体例ですが、

  • 立位不可のご利用者が歩き出そうとしていた
  • サイドレールの付け忘れ
  • 離床センサーのスイッチ入れ忘れ
  • 衝撃吸収マットの敷き忘れ
  • 飲む前に配薬ミスに気付く

等々です。


 施設によって見解が分かれるグレーなモノとしては

《座り込み》

で、

《ご利用者が自分の意思で床に座って何か作業をしている状態》


 これは一律に軽微な事故の転倒として取り扱う施設もあれば、ヒヤリハットにしている施設もあります。


 施設の取り決めに従えば良いと思いますが、私個人としてはこれは事故ではないと思います。


 何故今まで自宅では床に座って作業することが当たり前な生活をしていた人が、施設に入ったと言う環境の変化だけで”自分の意思で”床に座ることすら許されなくなるのか?

 それこそ人権侵害なのでは?

と考えるからです。


 だって、介護施設において事故とみなされる行為は

「やってはダメな危険行為」

と判断され、抑圧されることを意味しますので。


 ただし、ご利用者が自身の身体能力の低下を見誤ることで頭から倒れる等のリスクもゼロではないので、ヒヤリハットとして情報共有は必要だと思うので、何もなしという考えでもありません。



<軽微な事故の具体例>

 軽微な事故。

 つまり事故報告書の作成が必要な具体例はこちらです。

  • 転倒
  • 転落
  • 内出血
  • 異食
  • 備品破壊
  • 暴力行為

等々。


 これらの事故でご利用者が受ける被害の度合いによって軽微か重大かを分けている施設が多いです。


 その分け方は施設によって違いますが、私が知っている分け方としては

◎、通院を必要とするかどうか?

◎、治療処置を必要とするかどうか?

辺りで分けている事が多いように思います。



<重大な事故の具体例>

 重大な事故。

 つまり、事故報告書か、テンプレートのないキチンとした報告書を書かなければならない事故の具体例です。

 基本的に市への報告は必須な事故だらけです。

 冒頭であげたあずみの里訴訟もこの重大な事故に該当します。

  • 軽微な事故で上げた内容で通院等を要する事故
  • 誤薬
  • 脱苑
  • 沈溺(ちんでき)
  • 虐待
  • 犯罪
  • 車両事故

等々。


 これらを防ぐために、軽微な事故、そしてヒヤリハットを減らす目的なわけですね。




最後に

 これらの目的を浸透させていなかったり、キチンと運用されていない施設では、

「なんでこんな報告書を書かされているの?」

「これはヒヤリハット?事故報告書?どっち?」

 このような声は毎日のように聞きます。


 もし貴方の施設も今現在そのような状態ならば、今回キチンと目的と分類を把握できたわけですからこのような声が少なくなっていくと良いと思います。


 適切に事故防止が運用されないと、今後あずみの里訴訟なんて比べものにならない事態になるかもしれません。


 その理由・背景についてはまた別の機会で。


 なお、事故報告書の書き方、その項目を書く理由等について詳しく知りたい貴方はこちらの記事をお読みください。

《介護職員のための、事故報告書の書き方とその目的。『事故報告書作成マニュアル』》


 具体的な記載の例文を見たい貴方はこちらの記事を。

《介護施設における事故報告書の記載例『転倒』》



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