高齢者が夕方~夜にかけて急に落ち着かずソワソワしてくる理由と対処方法。
夕方~夜にかけて落ち着かないのは認知症ではなかった!

「何で介護施設のご利用者は日中落ち着いていたのに、夕方~夜にかけて急にソワソワし出して、落ち着かなくなり、帰宅願望等も出て来るんだろう?」
このように疑問に思ったことはありませんか?
私はいつも思っていました。
しかし、調べてみるとどうやらきちんと理由があるようなんです。
今回はその
《夕方~夜にかけて落ち着かなくなる理由》
と、その対処法をご紹介して行きます!
その上でまず一つの勘違いを指摘します。
それは、この夕方~夜にかけて落ち着かなくなる理由は認知症のせいではない可能性が高いと言う事です。
夜間せん妄症

調べてみると、どうやら夕方~夜にかけてご利用者が落ち着かなくなるのは、
《夜間せん妄性》
と言う症状が原因のようです。
<夜間せん妄性とはどんな症状?>

夕方~夜にかけて、急に落ち着かなくなり、
◎、ウロウロと歩きまわる
◎、ブツブツと独り言を言い出す
◎、辻褄が合わない事を言い出す
◎、幻覚を見る。幻覚と会話を始める
◎、興奮する
◎、裸になろうとする
◎、物を弄ってばらまこうとする
等々。
どうでしょうか?
代表的な症状を列挙してみましたが、思い当たる症状はありませんか?
私が初めてこの事を知った時には、
「何これ!全部当てはまるじゃん!」
と興奮してしまったくらいです。
特に裸になるは今まで謎だったのでスッキリしました。
「何でこのご利用者は夕方や夜になると急に皆が居る前で脱ぎ出すの!?ここはお風呂じゃありませんよ!」
とか
「靴を脱いでテーブルの上に置かないでぇ~」
とか、
「○○さんが急に壁に喋りかけ始めました!何か見えているのかも!」
とか、そんな風景は貴方の施設で見られませんか?
早番職員が帰宅した後の夕方から急に立ち上がりが多くなり、話掛けても
「うるさい来るなよ」
とか怒り気味に一人で歩き始め、付き添いに職員を持って行かれるとか。
これらを認知症の周辺症状として理解しようとしていたので答えが出なかったということのようです。
<何故夜間せん妄になるの?>

これらの夕方~夜にかけて急に落ち着かなくなり、様々な行為が見られる原因が夜間せん妄症だとして、現場の介護職員が知りたいことは、
「何故夜間せん妄症が発症するのか?」
と
「どう対処したら良いのか?」
です。
まずは
「何故夜間せん妄症になるのか?」
です。
夕方~夜になると、日中と違い外部からの刺激が少なくなります。
更に暗くなることで状況認識がし難くなり、不安や恐怖心が増幅し、軽いパニックに近い形でせん妄症状が強まると考えられているそうです。
不安や恐怖心等のストレスが原因なので、認知症で元々状況認識が難しいご利用者だと、不安や恐怖を感じやすく、夜間せん妄を発症しやすいようです。
そのため、認知症のご利用者ほど夜間せん妄症は出やすいので、認知症の周辺症状と誤解をしやすいのかと思います。
夜間せん妄症の対処方法
<安心させる>

では現場の介護職員としては一番重要な
「結局どのように接し、どのように介助をしたら良いの?」
についてです。
最初に結論を一言で言うと、
《安心させること》
です。
夜間せん妄は刺激が少なくなる夕方~夜にかけて不安や恐怖から発症すると言われます。
そのため、その不安や恐怖を排除する接し方・介助をすれば改善が見られ得ると言う事です。
何を不安に思っているのか判明していない場合は色々と試してみるしかありませんので、代表的な対策方法を挙げていきます。
<五感を刺激する>

基本的な考え方として、五感の刺激が少なくなることでの不安や恐怖なので、五感に刺激を与える方法は効果的です。
五感とは
- 触
- 味
- 視
- 聴
- 嗅
の5つの感覚のことです。
夕方になると外が暗くなってきて視覚の刺激が減ります。
早番職員も帰り、日勤職員も帰宅準備に向けたり、日中のバタバタした雰囲気が落ち着くので、聴覚の刺激も減ります。
多くの施設では夕方の前におやつがあるので、おやつの味覚刺激もなくなる頃でしょう。
このように夕方~夜にかけて刺激がかなり減少するので、ここで刺激を与えることで不安や恐怖を軽減させる方法です。
具体的には
◎、この時間帯にレクを行う。
◎、清拭たたみやエプロンたたみ等のたたみモノをしてもらう。
◎、職員とのコミュニケーションの時間にする。
◎、リハビリを行う。
◎、明りを明るい照明にする。
等々。
実際にこの時間帯に何かお手伝いをして頂く事で落ち着いて貰おうとしている介護施設もありますよね。
気を紛らそうとする意図でやっていると思いますが、実は利に適っている方法のようです。
明りに関しては、認知症の周辺症状と思っていては思い付かない方法なので、ちょっと試してみたくなりますね。
<安心感を与える>

夜間せん妄症は一種のパニックですので、五感の刺激だけではなく、気持ちを落ち着かせていただき、安心させる方法も効果的と言われています。
その具体例といては
◎、本人のメガネや補聴器等を確実に装着する。
◎、時刻が明確に分かるようにする。
◎、本人が慣れ親しんだ物を近くに置く。
◎、ホットミルクを飲んでもらう。(味覚の刺激にもなる)
◎、不安になる前の明るい時間に散歩等で適度な刺激を与え、夜間熟睡してもらう。
施設だとメガネや補聴器等を壊さないように、貴重品として預かってしまっている場合もあります。
夕方の不安になる前に確実な装着は必要なようです。
散歩は、本当に夜間の話だと思われます。
夕方に効果があるのかは微妙な気がします。
この適度な刺激としての散歩を見ると、施設の介護職員さんは
「散歩をして疲れさせると言う事でしょう?任せてよ!」
とメチャクチャ歩かせてしまう傾向にあります。
ここでの散歩は適度な疲れで夜間熟睡していただくことです。
「これだけ沢山歩けば、疲れ果てて動けないでしょう!?」
と言う事を狙った方法ではありません。
私の施設でも夜間せん妄症が出ると、疲れ果てるまで歩かせてしまう傾向にあるので反省です。
夜間せん妄症と認知症

夜間せん妄症と認知症は合併症状を引き起こすそうですので、そのことについても簡単にご紹介します。
まず序盤で言ったように、認知症のご利用者は夜間せん妄症になりやすいようです。
認知症と言うだけでも不安や恐怖の中にいますし、認知能力が低下しているので夕方になるくらいの変化でも大きな変化に感じてしまうのかと思われます。
逆に、夜間せん妄症は認知症を悪化させるそうです。
不安や恐怖とは言いかえれば強いストレスです。
強いストレスは認知症を悪化させます。
そんな強いストレスを毎日のように受け続ける環境にあれば当然認知症は悪化しますよね。
そのため、
「最近○○さん急激に認知症が進行していない?」
というご利用者は夜間せん妄症が原因だったりするそうです。
最後に
認知症を悪化させないためにも、夜間せん妄症を知り、夕方~夜にかけての落ち着かないソワソワした状況に《適切に》対処する必要があるわけですね。
ご利用者本人が装着するメガネ、補聴器、入れ歯、時計等々は夕方前にキチンと装着した頂く。
夕方にせん妄症が発症するご利用者の周りを明るくする。
更にレクやゲーム、仕事をしてもらったり、ホットミルクを飲んでもらう等々で刺激を作る。
このような方法が必要なのかもしれません。
とすると、夕方暗くなり始めるくらいの時間帯こそ職員の配置を多めにする必要がある時間帯なのかもしれません。
夕方~夜にかけてソワソワし、落ち着かないご利用者は不安や恐怖の中にいます。
そして、その不安や恐怖を出来るだけ取り除くことで、認知症の悪化を防ぎ、安心した生活を送って頂けるようになり得ると言う事かと思います。
この記事を読んだ貴方はもう
「何でご利用者は夕方~夜にかけて落ち着かなくなるんだろう?」
とはなりませんよね?
是非明日からでも実践してみて下さい。
この夜間せん妄症に対処するのはご利用者の為はもちろん、貴方自信のためにもなることですからね。
なお、
「えっと、この機会に認知症についてもキチンと確認しておきたいかもしれません。」
という貴方はこちらの記事を合わせてお読みください。
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