「洗脳が解ける」と評されるほど心が洗われる本。《アルケミスト~夢を旅した少年~》

貴方が夢や理想を語らなくなったのはいつからですか?

<夢を語ると冷遇される>

 私の名前

『日本一の介護施設を作る介護士』

これを見て率直にどう思いましたか?


 貴方がどう思うか分かりませんが、ほとんどの人からは

「何言ってるのこの人は?無理に決まってるでしょ」

との冷たい目を向けられます。


 名前だけではなく、私が記事でもツイッターでも主張していることの大半は

「理想ばかり語って、現場のことを知らないの?無理無理」

と言われます。


 そのように、夢や希望、

「こんな介護が出来たら最高だなぁ!」

を語る人を冷遇し、自分自身も夢や希望を語らなくなってしまった大人が多いように感じます。



<大人が夢を語るから子供が憧れる>

 今の介護業界にもそんな大人が多くいます。

 しかし、介護の世界にこそ、夢や理想を語る大人が必要だと思います。

 そんな介護職員が増えれば必ず介護と言う世界に憧れを持つ子供が増えます。


 介護に限定しなくても構いません。

 大人が夢や希望を語る業界に子供は憧れます。

 子供が憧れるスポーツ選手、ユーチューバーだって、夢や希望、楽しいということを本人達が発信しているから子供が憧れているんです。


 介護も夢や理想を語る人を冷たい目で追いこむのではなく、

「それいいね!」

と皆で受け入れられる世界になると、子供も憧れますし、何より貴方も楽しくなると思いませんか?


 そんな

《夢や理想を語らなくなってしまった大人達にこそ読んで欲しい本》


 それが今回紹介する

《アルケミスト~夢を旅した少年~》

です。


 なお、この本は小説なので、本記事はネタばれになりますので、自己責任で読み進めて下さい。




羊飼いの少年の日常

 主人公は羊飼いをしている少年です。

 羊と語らい、羊から学び、世界を回る。

 そんな生活をしていました。


 そんな少年は1本の大きなイチジクの木が生えている廃墟となっている協会で寝る事にしました。

 その夜、少年はある夢を見ます。


 夢の中に出てくる知らない少年に手を引かれ、エジプトのピラミッドが見える場所に連れて来られ、

「貴方がここに来れば隠された宝物が見つかるよ」

と言われる夢です。


 この夢は一週間前にも見ており、必ずその宝物がある具体的な場所を教えてもらう直前で目が覚めてしまう。


 そんな少年が今目が覚め思う事とは。

 それはこれから向かう街で以前出会った少女のこと。

 要は片思いをしている少女に想いを馳せました。




羊飼いの少年の過去

 この羊飼いの少年は羊飼いの両親の間に生まれた子供ではありません。

 この羊飼いの少年の親は農家でした。

 少年は世界中を旅する事に憧れていましたが、両親は

『農家出身の神父』

という自慢をしたくて少年を神学校に通わせていました。


 神父とは教養があり、誠実で、人に憧れられる、いわゆる

《立派な仕事》

だからです。


 ある日少年は

「私は世界中を旅したいんだ」

と両親に打ち明けます。


 すると両親はこのように言ってきました。

「今まで無数の旅人を見て来たではないか?彼らは何か新しいことを求め街に来るが、何も得ず『昔の方が良かった』と結論付けて立ち去るだけだ。」

「それに彼らは髪の色や肌の色が様々で、街に住む人間とは根本的に違う生き物なのだ」

「それに彼らは旅をするだけのお金を持っている。農家にそんなお金はない。私達の中まで世界中を旅できる人と言ったら羊飼いくらいだ。」


 つまり、

◎、旅人になるよりも神父になった方が凄いし、学ぶことが多い。

◎、農家はお金の問題で旅は出来ないから諦めろ。

と言いたいわけですね。


 しかし、少年は最後の一言。

『仲間で旅を出来るのは羊飼いくらいだ』

に喰い付いたわけです。


 両親は

「旅が出来るとしても羊飼いくらいしか無理だから諦めろ。」

と言いたいのですが、少年はこの言葉を

「羊飼いなら農家の中までも世界中を旅することが出来る」

と受け取ったわけです。


 こうして少年は今、廃墟となった教会に神父としてではなく、羊飼いとしているわけです。




少年が羊から学んだ事

 羊達と旅をしていると今まで知らなかった場所に行ける。

 水と食料を探す方法等も学ぶことが出来る。

 今心に思う、少女との出会いも羊から得た大切なことの一つです。


 しかし、この羊達はただ単に水と食料を求めて生きているに過ぎない。


 羊達にとって生きるための水と食料探し。

 その行為の中で一緒にいる少年が様々なモノを見つけ、経験しているから有意義なだけ。

 これは人間も同じだと言う事に少年は気付きます。


 何故少年は羊と違うのか?

 それは少年にとって重要なことは、自身の夢

『世界を旅する事』

 この中に自分がいることが重要だからです。


 今やこの少年は羊飼いのまま旅をする以外の選択も出来ます。

 羊と共に旅をすることからは何も得ることが出来なくなれば、羊を売り、船を買って船乗りとして世界を旅することだって可能だからです。


 夢を追い、行動したからこそ開けた可能性の広がりです。




占い師との会話

 少年は少女のいる街に向かう途中、休憩場所として近場の街に立ち寄りました。

 そこで有名な占い師に夢について占ってもらうことにしました。


 あの

《エジプトのピラミッドが見える場所で「ここに来れば隠された宝物が見つかるよ」と言われる夢》

についてです。


 占い師はこう言います。

「今は占いの代金を貰わないことにするよ。その代わり、もしお前がその宝物を見つけたら、その10分の1を私におくれ」

「私はピラミッドなんてモノ知らない。けれどお前の手を引いたのが子供なら”それ”はこの世に有ると言う事だ。お前はそこに行かなければならない。そして宝物を見つけるだろう。」


 少年はこれだけでは何も具体的な事を知れていないと思い、質問をします。

「どうやってエジプトには行けば良いの?」

「もしも私がエジプトに行かなかったら、占い代金はどうするの?」

と。


 すると占い師はこう答えます。

「私は夢を実現する方法までは知らないよ。夢を占うことしか出来ないからね。だからこうして娘達に養われながら生きているんだ。」

「お前が行かないならお宝は手に入らないのだから、私は代金を頂けないね。この世の中ではよくあることだ。」


 この先のストーリーを知ってこのやりとりを見るとまさに

《この世の中の話》

をしていることが分かります。


 ほとんどの人は夢を夢のまま終わらせて行動はしない。

 だから本人も、その周囲の人達も、何も得ることが出来ない。

 ずっと今のまま。

という事を言っているのかもしれません。




王様との出会い

 占い師との会話をぼぅ~と考えていると一人の老人が話掛けてきます。

 その者は王様だとのことです。

 その者が本当の王様かどうかはともかく、少年は会話をしたくありません。

 今の少年は占い師との会話、これから数日後には合える少女とのやり取りに胸ふくらませているからです。


 その老人を邪険に扱い、立ち去ってもらうために手にした本を見せます。

「この老人が読み書きが出来なければ、その事を恥ずかしく思い、別の場所に行くだろう」

と考えたためです。


 しかし、少年の思惑は外れました。


 老人はその本を見て

「この本はとても重要な本だ。しかし本当にイライラする本だ。」

と言い出しました。


 少年はこの老人の感想に興味を引かれました。

 老人は続けます。

「この本は世界中の本に書かれていることと同じことを書いている。」

「つまりこの本や世界中の本は『人間は自分の運命を選ぶことが出来ない。そして、誰もが世界最大の嘘を信じている。』と言っているのだ。」


 少年はすっかり老人の言っている事が興味関心の的となっていました。

 そこで少年は

「世界最大の嘘って何ですか?」

と質問します。


「人は人生の中で自分に起きている事をコントロールできなくなってしまう時点がある。すると運命によって人生を支配されてしまう。それが世界最大の嘘だよ。」

との事です。


 私はこの部分について、

『人は人生のある時点で自分に起きている事、置かれている状況に気付けず、そのまま漠然と生きてしまう。その後は世間的に”当たり前な生き方”と言うモノを選択してしまう。』

と言っていると感じました。


 少年は

「そんなこと私の人生には起こらなかった。神父にしようとした両親に従わず、羊飼いになることを自分で決めたんだから。」


 老人は言います。

「その方がずっと良い。お前は本当に旅をすることが好きだからな。」

「私は、お前がいつもやり遂げたいと思ってきた事を、自分の運命として発見したから話掛けたんだよ」

とのことです。




パン屋の男

 王様との会話はとても重要なターニングポイントなのでまだ続きます。

 王様から

「お前は何故羊の世話をするんだ?」

と聞かれた少年は

「旅がしたいからです。」

と答えます。


 高台から街を見下ろしながら会話をしていると、街の中にあるパン屋さんが見えました。

「あのパン屋の男も子供の時には旅をしたがっていた。旅をするためのお金を稼ぐためにパン屋を買い取りパン屋を始めた。そして今もパン屋をしている。」


 少年は

「それなら羊飼いになれば良かったのに」

と言った。


「『人は自分が夢見ていることをいつでも実行できると言う事』にあの男は気付いていないのだよ。」

「実はあの男も羊飼いになることを考えたんだよ。しかし、羊飼いよりもパン屋の方が立派な仕事だと思ったんだよ。パン屋は家を持てる。羊飼いは外で寝ないといけないからね。世の中の親達も羊飼いよりもパン屋に自分の娘をやりたがるものさ。」


 少年は片思いをしている少女を思い浮かべズキンと心が痛むのを感じた。


 王様は続けます。

「結局、人は自分がやり遂げたいと思ってきたことよりも、他人が羊飼いやパン屋のことをどのように思うかの方が、最も大切になってしまうんだよ。」


 色々な昔話をし、王様は

「人は人生の早い時期に生まれてきた理由を知るのだよ。だから、こんなにも早い時期にそれを諦めてしまうんだろうね。しかしそれはそうなるべくしてなっているのさ。」

「もしもお前がお前の宝物について知りたければ羊の10分の1を私に寄越しなさい。」

と続けます。


 少年は占い師の占い代金を思い出し

「私が宝物を見つけた時に、その10分の1ではどうでしょうか?」

と提案します。


 王様はその提案に失望の表情を見せます。

「まだ手に入れていない物をあげるとの約束をしたらお前はそれを手に入れたいと思わなくなるだろうね。その占い師はそのようなことをする専門家なんだよ。」

「ともかくお前は、人生の全ての事には対価が必要だと言う事を学べて良かったのだよ。」


 私はこの部分も好きです。

 占い師は夢を追う事を容認しつつも、実は諦めさせる行動を取っていた。

 その証拠に、占い師自身自分の生活もままならない状態でしたからね。


 世の中にはそんな人達が沢山いる。

 夢を追うかどうか悩んでいる人を応援していると見せかけて、夢を諦めさせる行動をしている人が必ずいると言う事を言っているように感じます。


 夢を追うかどうか悩んでいる時に

「私は応援しているよ!もし貴方が有名になった時には云々」

みたいな事を言う知人のことですかね。




全てを失うこともある

 少年はエジプトの地に立っていた。

 羊は全て売ってしまい一匹も残っていない。


 見知らぬ文化、知らない言語を話すエジプトという場所で孤独感を持っていたけれど不安はなかった。

 何故なら少年は、羊を売ったお金を沢山持っていたから。

 お金さえあれば、人は少年に親切にしてくれることを知っていたから。


 言葉が分からない中、少年の話す言葉を使える人と出会います。


 その人は少年の夢の話を聞いて

「ピラミッドなら砂漠を超えないといけない。それならラクダを買わないといけないよ」

等と具体的な方法までアドバイスをくれました。


 その人にピラミッドへ向かう旅準備を手伝ってもらっていると、その人が少年のお金が入った袋ごといなくなっていることに気付きます。

 その人は親切を装って少年に近付き、少年が持っていた大金を狙っていたのでした。


 少年は見知らぬ土地、見知らぬ言語を使うエジプトと言う地に置いて、頼りの綱だったお金まで失ってしまいます。


 これも現実世界であり得る事ですよね。

 夢を追う事で今まで自分が生きていた世界とは全く違う世界に身を投じます。


 そんな不安な中で少しでも親切にしてくれる人が現れると信じて頼ってしまう。

 しかし、それは不安に付け込もうとしているだけの悪い人物の可能性もあります。


 夢を追うと言う事は、そのようなリスクとも向き合わなければならないわけですね。




当たり前に気付く

 少年は絶望します。

 夢を追った事を後悔します。


 しかし、落ち着くと少年はこのように考える事にしました。

「自分の意思で決めると約束したんだ。ここは見知らぬ場所ではない。新しい場所なんだ」

と。


 そうです。

 少年のしたい『旅』というモノは

《自分がまだ知らない、新しい場所を求める行動》

です。


 羊飼いをしていた時のその行動と何が違うと言うのでしょうか?


 すると一人のキャンディー売りが話掛けてきます。

 もちろん、少年が知らない言語でです。


 しかし、落ち着いた少年はこのキャンディー売りとのコミュニケーションに困る事はありませんでした。

 何故なら少年は、羊達との旅で言語が通じないコミュニケーションと言う事も当たり前にやっていたからです。


「何故そんなことに気付かなかったんだろう?あまりにも当たり前で慣れ過ぎてしまっていたからだろう」

と少年は思いました。


 自分が決めたことを追うには忍耐が必要。

 そして、その忍耐と言うものがどのようなモノか少年は知っていた。

 またしても羊飼いとして学んだことが役に立った事を少年は気が付いた。


『自分が今まで経験してきた事、知っている事は全く別のことを追う選択をしても必ず何かしら役に立つ』

 まさにこのような事を言っていると感じます。


 私も本を読んだり、何か学ぶ時には

『どんなことでも必ず介護に活かせる場面はある』

とのスタンスで学びます。




クリスタル商人との出会い

 少年が

「いつものことだ!私は夢を追っているんだ」

と落ち着き街を歩いていると、クリスタルを売るお店に

『何カ国語の言葉が通じます』

との札を見つけます。


 その札を見ていると裏から店主が出てきました。


 そこで少年は

「今のように汚れたままでは誰も買いませんよ。良ろしかったらこのガラス(=クリスタル)を磨かせてくれませんか?その代わり何か食べ物を下さい。」

と提案します。


 少年がクリスタルをピカピカに磨くと2つのクリスタルが売れました。

「外で一緒にお昼を食べようか」

と商人は近くのカフェに少年を連れて行きました。


 カフェで商人は大声をたてて笑いました。

「お前さんはガラスを磨く必要はなかったんだよ!この国の教えで『お腹の空いた人には食べ物を与えよ』と書かれているからね。」


「それなら何故貴方は私に磨かせたのですか?」

少年は聞いた。


「クリスタルが汚れていたからだよ。それにお前さんも私も、自分の心から”否定的な考え”を拭い去る必要があったからね。」

「私はお前さんにこのまま私のお店で働いて欲しいと考えている。」

「お前さんは私のために働いてくれるかな?」


 少年は

「わかりました。私がピラミッドまで行くお金を溜めるまで働きます。」

と答えると商人はまた大きな声で笑い出しました。


「お前さんがお店の全てのクリスタルを1年間磨いたとしても、お店のクリスタルが全部売れたとしても、借金をしないとお金は足りないよ。ここからピラミッドまでどれだけ離れていると思っているんだい?」


 ・・・その瞬間世界が静まり返った。

 夢も希望も、王様も運命も、宝物もピラミッドも、全てこの世から消えてしまった。

 少年の心が沈黙したことで世界その物が消えてしまったかのようだった。


 少年は

「死んだ方がましだ」

ただそう思った。


 この事を知る前までに感じていた喜びや気付き、全てが突然消えてしまった。


 商人は少年の変化に気付き

「・・・お前さんが国に帰るお金を私があげるよ」

と提案したが少年は黙ったまま立ち上がりこう言った。


「貴方のところで働きます。羊を買うお金が必要になったので。」


 ここは夢を追い続けていた少年が本当に絶望をし、夢を諦め、また以前の羊飼いに戻ることを決意した瞬間ですね。


 お金を失っても立ち直った少年でしたが、そもそも夢の実現はそれ以上の無理難題だったことに気付き、途方もない絶望に陥ってしまうんですね。

 こればかりは

「自分で決意したことだから!」

という気持ちの問題でどうこうなるものではないんですよね。


 現実でも、夢を追えば追うほど、その難しさを現実問題として突きつけられ、絶望することはあります。

 夢が目標になるということはそう言う事だと思います。




商人の昔話

 少年は

「この仕事は私を幸せにはしない」

と思いながらも、1ヶ月以上クリスタル屋で働いていました。


 それでもこの商人は少年のことを正当に扱ってくれたので仕事を続けました。

 少年がやりたいこと

《旅をすること》


 早く羊飼いに戻りたい少年は歩合を増やすために、クリスタルを沢山売るための様々な提案をします。

 全て羊飼いとして養った知恵や経験を基に考えだした提案です。


 最初は

「私は変化を好まない。お前さんがクリスタルを磨いてくれるようになっただけで商売は安定し、上手くいっているよ。このまま上手く行けばお前さんももうすぐ羊飼いに戻れるだろう?これ以上何を望むんだい?」


 少年はそんな商人に対して

「貴方は旅をする夢を持ったことがないのですね。」

と言った。


 この会話の後、商人は少年の提案を了承していきます。

 店の中に入らなくても道を歩く人達にも商品を見てもらうための陳列ケース。

 高台を上ってきた旅人に対して、クリスタルの器に入れたお茶を提供するサービス。

等々。


 全てが成功し、クリスタル屋は物凄い人気店となります。


 そんなある日、商人は少年にこんな話をします。

「お前さんは私に旅する夢をみたことがないと言ったね。私達の教えには巡礼と言うモノがある。」

「巡礼とは、一生に一度、聖なる都市メッカを訪れなければならない教えだ。メッカはピラミッドよりも更にずっと遠い場所にある。」

「私が若かったころ、私の望みはお金を貯める事だった。自分がお金持ちになればメッカに行けると思っていたから。」

「クリスタル屋を始めると、私はお店を他人に任せて出掛けることすら出来なくなった。クリスタルはとても壊れやすい物だからね。その間、私のお店の前をメッカへの巡礼者が沢山通り過ぎて行ったよ。」

「そのほとんどは私よりも貧乏人だったよ。しかし、巡礼から帰ってきた人達は巡礼に行けて本当に幸せそうだったよ。そんな一人の靴屋なんて『靴を売り歩く方がよっぽど辛い』と言っていたよ。」

「いつしかメッカを思うことが私を生きながらえさせているんだよ。もしも私が夢を実現してしまったら私にはこれから生きていく理由がなくなってしまうのではないか?それが怖いんだよ。」

「私は夢見ていたいだけなのかもしれない。メッカに巡礼する姿を何千回も想像したよ。同じ巡礼者達と語らい、祈る姿も想像した。しかしそれを実現したら・・・だから私は夢見ている方が好きなのさ。」

「しかしお前さんは違う。夢を見ているのではなく、実現しようとしている。お前さんと私は違うんだよ。」


 この部分は下手な説明なんて不要だと思います。

 現実で考えても、この商人が言っていることそのままのことが心に刺さる人は多いと思います。


 私だってあります。

「もしも練習嫌いにならず、ずっと柔道を全力でやり続けていたら有名選手になれていたかもしれない。」

 今でも思うことがあります。

 実際にブランクが5年あっても、オリンピック候補選手の一人とそれなりに戦える経験をしてしまったので。


 少し前にあった

『大人AKB』

というモノも、この商人と同じ思いを持った大人達に実現の機会を与えたモノではないでしょうか?


 実現することは怖いと思いつつ、夢を諦め後悔の中、平穏を生きている大人達。

 そんな大人達に実現の機会を与える。


 しかし実現すると今すがっている夢や後悔がなくなる。

 それがなくなったら自分は何を原動力に生きていけば良いのだろうか?


 その思いを超えた大人が

『塚本まり子さん』

だったのではないでしょうか?




少年の夢への選択

 商人は更に少年に語りかけます。

「お前さんは私に今まで見えなかった世界を見せてくれた。今それが見えるようになり、《自分の可能性》に気付いてしまった。」

「私は自分の可能性に気付く事でドンドン不幸になっていくような気がする。何故なら、『自分はもっとできる』と気付いているのに私にはそれをやる気がないからだ。」


 そして莫大なお金を手に入れ少年はお店を出る事にしました。

「私は今日出発します。私は羊を買うのに十分のお金を手にしました。貴方はメッカに行くのに必要なお金を得ました。私の出発を祝福して下さい。」


 すると商人は少年にこのような言葉を掛けました。

「私はお前さんを誇りに思っているよ。お前さんは私に新しい気分を持って来てくれた。しかし、お前さんは知っているだろう?私はメッカには行かないということを。お前さん自身が羊を買わないと言う事と同じようにね。」


「マクトゥーブ。”それ”は書かれている事だからね。」


 その後少年は、砂漠を渡るキャラバンの中に居た。




錬金術師を探すイギリス人との出会い

『宇宙に一つしかない本当のことば』

 これを見つけるためにイギリス人は様々な勉強をしました。


 様々な言語、様々な学問、物事を解決する知識。

 そして今彼は錬金術について学んでいます。


 今まで学んできた学問は全てキチンと習得できたけれど、錬金術に関してだけは行き詰っていた。

 そして、その問題を突破するために錬金術師と知り合おうと試みたが、うまくいかなかった。


 錬金術師は『大いなる作業』により、いかなる金属をも金に変えるとされている。

 そのための秘密が錬金術師が発見したと言う

『不老不死』

『賢者の石』


 それらの秘密を知るために、砂漠のオアシスのどこかに住んでいる錬金術師に合うために彼はキャラバンにいた。


 旅の間、イギリス人は他の人達との交流をせず本を読みふけった。

 同じキャラバンにいた少年は、羊飼いの時には学びとして持っていた本を読まず、ラクダやキャラバンの人達との会話を楽しんだ。


 キャラバンの人はこう少年に話をしました。

「私には果樹園と妻子がいました。メッカにも巡礼をし、その時に『幸せで人は死ねるんだ』と本気で思ったものです。」

「そんなある日、大地が揺れ始め、ナイル川が氾濫しました。『そんなことは他人には起きても、絶対に自分には起きないだろう』と思っていたことが起きたのです。」

「妻は子供を失う事を恐れました。私は私が持っているモノ全てを失うことを恐れました。妻子は無事でしたか、土地は荒廃し、こうして私はラクダ使いをしています。」

「私達は持っているモノ。命であれ、所有物であれ、土地であれ、それを失うことを恐れます。しかし、失ってみると自分にとっての必要性と希望を満たすことを忘れなければ未知を恐れる事は亡くなるんだと思います。そんな恐れは消えてしまうんです。」


 その後砂漠では部族間の争いが勃発。

 キャラバンは争いに巻き込まれないよう動く必要が出てきます。


 それを知ったイギリス人は

「私は危険に晒されるのか?」

と騒いでいます。


 そんな彼に少年は

「貴方はキャラバンにもっと注意しておいた方が良いと思いますよ。回り道はするかもしれませんが、私達は同じ目的地に向かっている事に変わりはないんですから慌てる必要はないでしょう。」


「君こそ、もっと世界について書かれた本を読むべきだよ。本はその点ではキャラバンのようなものだからね。」


 その後部族間の争いに巻き込まれないため、夜間火は灯されなくなった。

 少年とイギリス人は語らう事をするようになっていった。


 そして語らいの中でお互いが

「僕ももっとキャラバンを注意して見た方が良いのかもしれない。」

「そして僕も、貴方の本をもっと読んだ方が良いのかもしれない。」

と言い合った。


 次の日から彼らはキャラバンを観察し、本を読んだ。

 そして少年は疑問に思ったことをイギリス人に質問するようになりました。


「錬金術師は自分の決めた運命を実現し、『大いなる作業』『賢者の石』『不老不死の霊薬』を派遣した事は分かりました。そして、全ては一つのエメラルドに書けるほどとても単純なことだと言う事を学びました。」

 少年のこの言葉にイギリス人は錬金術を全く理解できていないと感じ

「君は元のようにキャラバンを観察したら良いよ。もっともキャラバンは僕に何も教えてはくれなかったけどね」

と伝え、お互いは元に戻って行きました。


 この部分は、物事を見る視点、見る姿勢、学ぶ方法等によって物事が見せる姿・形は違ってくると言うことを言っているように感じました。

 少年にとって錬金術は自分とは関係ない世界の話で、本の中の世界の出来事。

 イギリス人にとってキャラバンに知は存在しない。


 何かを得ようとする意思はあっても、ただそれだけで漠然と眺めていてもそれだけでは得られるモノはないのかもしれませんね。




オアシスという楽園

 砂漠での中立地帯オアシス。

 ここに居る限り部族間の争いに巻き込まれる事はありません。

 そのような協定になっているからです。


 そこで少年は一人の少女に出会います。

 見た瞬間運命を感じました。

 お互いがお互いに運命を感じ、魅かれ合い、結婚します。


 少年は砂漠のピラミッドに宝物を探す夢のために途中立ち寄っただけのオアシスで大切な人を持つわけです。

 つまり、その女性こそが少年にとっての宝物になったため、それ以上旅を続け、ピラミッドに行く必要性がなくなってしまいました。


 そこで少女はこう言います。

「私は砂漠の女です。砂漠の女性は外に出て行った男性が無事に帰ってくることを願い生きることが幸せなのです。私のためにも貴方は宝物を探しに行って下さい。私を貴方の無事な帰りを待つ砂漠の女性にして下さい。」

と。


 少年は少女の希望もあって再び宝物を探す旅に出る決心をします。

 そんな折に、少年を虫の知らせが走ります。


 少年は、空を飛ぶ2匹の鷹を見ました。

「これもクリスタル商人の言っていたマクトゥーブ。”それ”は書かれている事なのかな。このオアシスであの少女と出会ったことも。 」


 そのように何となく鷹を見ていると突如1匹の鷹がもう1匹の鷹を襲いました。

 その瞬間少年は、オアシスを襲う軍隊を思い浮かべました。


 それは一瞬のことでしたが

「これもマクトゥーブ。”それ”は書かれている事?」

 少年はそれが本当に起こる事のように感じました。


「軍隊が攻めてくるぞ!」

少年は言った。


 この虫の知らせをキャラバンのラクダ使いに話しました。

 するとラクダ使いは過去に、物事の未来を見通せる千里眼と呼ばれる人物との会話を教えてくれました。

「私が未来を知りたくて千里眼に見てもらった時の話です。千里眼は私にこう言いました。」

『お前は何故未来を知りたいのだ?もし起きて欲しくないことを回避したいと言う事なら、それは既にお前の未来ではなくなると言うことではないか?』

『もしも未来に良いことが来るならそれは嬉しい驚きになるだろう。しかし、悪い未来が来るならお前さんはまだ起きない、回避できてお前さんの未来ですらないことに苦しみ続けなければならなくなるだろう。』

『私は未来が見えるのではない。お前さんの過去を知ることで未来を推測しているのだ。その全ての秘密は現在にあるものだ。未来ではなく、現実をよく見る事によって将来に起こる事も良くなるのだ。未来のことなど忘れて今を信じて毎日を生きなさい。そうすれば変えられる未来の前兆に気付くだろう。』

 千里眼の言っていたことを少年に伝えた後、ラクダ使いは少年に

「軍隊が近づいてきていることを族長に伝えなさい。」

と言いました。


「そんなことをしたら笑われてしまいます。」

と躊躇していた少年ですが、このオアシスには大切な女性もいるので、万が一でも本当に軍隊が攻めて来るなら助けたかった。

 そのため、オアシスの部族長のところに話をしに行くことを決めます。


 その話をすると族長は笑うどころか、ある決心をし、このように宣言します。

「我々はこの少年の虫の知らせを信じて、明日《オアシスにおいて武器を所持してはいけない》とする協定を破る。その武器が敵を倒すたびに少年には金貨を与える。しかし、一度出した剣が使われないまま引き揚げる事はできない。もし敵が現れないときはその剣はお前に対して使われるだろう。」


 少年は街を歩きながら後悔はしていなかった。

「例え明日死ぬ事になっても、今は海峡を渡り、クリスタルの店で働き、砂漠の静寂と大切な女性の眼を知った後だ。神父にならず、家を出てから今まで毎日を、今を精一杯生きてきた。自分は他の羊飼いよりも多くのことを見て経験してきた。それを誇りに思っている。後悔などない。」


 すると突如砂埃が立ち上がり、目の前には馬に跨った黒ずくめの服を着た男がいた。

 そして男は

「誰が鷹の飛び方の意味を読んだ?」

と大声を挙げた。


「私です」

と少年が名乗り出て、この男との問答が始まります。


 この男、実は本物の錬金術師であり、

「お前の勇気を試す必要があった。ここまで来て諦めてはいけないぞ。砂漠は全てのモノを試す。そして取り見出した者を殺すのだ。もし明日の日没時にお前の首がまだ肩の上にあったら、わしを探しに来るのだ。」

と言うと立ち去って行った。


 次の日、オアシスを襲った軍隊は完全武装をした2000名のオアシスの戦士によって取り囲まれ、隊長を残し全滅することとなった。


 軍隊の隊長はオアシスの部族長の前に引き出され、何故不戦協定を破りオアシスを襲ったのか質問をされた。

「自分の部下達が長い戦いで疲れ果て、食糧も飲み物もなくなっていた。オアシスを占領しなければ戦闘に戻れなかったのだ。」


 オアシスの族長は隊長に対し、

「それは気の毒なことだ」

と声を掛けた。

 この言葉の後、彼の体は砂漠の風を受け、物言わずぐるぐるとねじれるだけの”物”となっていた。


 そして、少年は少女の旦那であり、オアシスの相談役となっていた。


 ちょっと長い部分を一つにまとめてしまいましたが、オアシスでの話も夢を追うと言うことであり得ることを言っていますよね。


 何度も挫折をしながらも、やっと夢を追う事に全力を向け始めたとしても、その中で心休まる瞬間が出来得ます。

 その安らぎに身を委ねて夢を諦めてしまう人も多くいますからね。


 警察学校なんてまさにそんな場所です。

 警察官になるために頑張って採用試験に合格し、警察官としての訓練を受けている最中、一歩外に出ればそこには平穏な世界が広がっています。

 警察学校内はとても辛い世界です。


 自分の夢に向かって頑張っているハズなのに、戻れなくなってしまい退職する生徒が物凄く多いんですよね。


 そこで少女のように

「私の為を思ってくれるなら、夢を追って下さい」

と言える人こそが本当の応援者なのかもしれませんね。


「これで死んでも私に後悔はない。」

の部分も現実で言える事ですよね。


 今の貴方は

「今死んでも後悔はない。」

と言える生き方をしていますか?




錬金術師との会話

 少年は錬金術師のところにいた。

「貴方は私に何を教えてくれるのですか?」

少年は尋ねた。


 錬金術師はこのように答えた。

「お前は必要な事は全て知っている。私はお前に宝物の方向を向かせるだけだ。」


 少年は

「でも私は既に宝物を持っています。ラクダやクリスタル屋でのお金、先日の報酬として貰った金貨。そして大切な存在も得ました。彼女は僕の得た何よりも大切な宝物です。」


「しかし、そのどれもピラミッドで得たものではない。お前は今まで何のために様々な経験をし、様々な事を学んできた?お前が今まで経験をし、学んだ事が意味を持つためにお前はピラミッドの見える場所で宝物を見つけなければならないのだ。」

 錬金術師はそう答えた。


 そしてこう続けた。

「今夜は良く休みなさい。戦士が戦いに備えるように。そしてラクダを売って馬を買いなさい。」

「ラクダは裏切る生き物だ。ラクダは一切疲れを見せない。そして突然倒れ死んでしまう。馬は少しずつ疲れていく。だからお前は馬をいつでも理解し、休ませることもできる。お前にもいつ馬が死ぬ時なのかがわかるのだ。」


 この部分は特に夢や理想を実現しようと頑張っている人に向けた強いメッセージだと思います。

「辛い姿を隠して見せずに、突然潰れてしまうのは周囲の人間の為の頑張りではなく裏切りなんだ!」

ということですよね。


「夢を本気で実現させ、周囲の期待にも答えたいなら、キチンと休まないといけない」

という事ですよね。




停滞は衰退を意味する

 更に錬金術師とのやり取りは続きます。

「私がお前を案内して砂漠を渡ろう」

 こう告げた錬金術師に少年はこう返します。

「私はオアシスにいたいのです。私はオアシスに何よりも大切な宝物を見つけました。彼女と一緒にいたいのです。・・・もしも私が砂漠へ行かず、オアシスに留まったらどうなりますか?」


「彼女は砂漠の女性だ。彼女はお前と言う宝物を見つけた。だから彼女はお前にもお前が探している物を見つけて欲しいと願っている。」

「このままお前がオアシスに留まればどうなるか?お前はオアシスの相談役だ。沢山のラクダや羊を買うお金も持っている。彼女と結婚をして1年間はとても幸せに過ごせるだろう。」

「お前は砂漠が好きになり、5万本のヤシの木の全てを知るだろう。そして砂漠が最高の先生となる、物事を読み解く力をドンドン身に付けていくだろう。」


「2年目のいつか、お前は宝物の事を思い出す。しかしお前はそれを無視するだろう。そしてお前は身に付けた知識や能力を砂漠の民のために使うだろう。族長はそのことにとても感謝する事だろう。そしてそれらが更にお前に富と名誉を与えるだろう。」


「3年目になると、運命は更に強くお前に宝物について語り出すだろう。するとお前は宝物のことを思い出しては夜な夜な砂漠を歩きまわるようになるだろう。そしてその姿を見た彼女は自分自身がお前の探究の邪魔をしたと思って不幸になる。しかし、お前は彼女の事を愛し、彼女はお前の愛に答えるだろう。」

「そしてお前は、彼女が『ここに居てくれ』と言わなかった事を思い出すだろう。砂漠の女は自分の男を待たなければならない事を知っているからだ。だからお前は彼女を責める事をしないだろう。しかし、お前は砂漠を歩きながら『もしかしたら自分は宝物を探しにいけたかもしれない』『もっと彼女への愛を信じることが出来ていたかもしれない』と何度も、何度も考えだすだろう。」

「何故なら、お前をオアシスに引き留めているその感情は、『もう二度と帰って来られないのではないか?』と言うお前自身の恐怖だからだ。そしてお前の宝物は永遠に埋もれてしまうだろう。」


「4年目のいつか、お前は砂漠から教わることを見捨てるだろう。お前が耳を傾けることを止めてしまうからだ。そのことによって部族長はお前を相談役から解任するだろう。しかし、その時点でお前はお金持ちの商人になっているだろう。だから生活に困る事はない。」


「お前はその後の人生をずっと『自分は運命を探求しなかった。もう追い求めるには遅すぎる』と思って暮らすだろう。もしお前が探究を止めたとしたら、それは真の愛ではないということを知るべきだろう。」


「私は貴方と一緒に行きます。」

 少年はそう答えていた。


 これもとても重要なやりとりだと思います。

 物事の判断をする時に、その先を考え、どうなって行くのかの先見を持って判断しています。

 人と言うのは、今目の前にある利や幸せに身を委ねガチです。


 その幸せは確かに1年、2年と続くかもしれません。

 そこまでしか見えていないのに、

「この判断は最善の、一番幸せに向かう選択だ!」

と考えてしまう。


 このやりとりは、更にその先、今ある環境が更に良くなり、そして衰退していく所までを見ています。

 衰退の未来は少年の『停滞』の判断によるものです。


 そして、その後の未来はパン屋やクリスタル屋の商人と同じ未来だと言う事を示しています。

 夢を追う事が必ずしも素晴らしいとは限りません。

 しかし、夢や理想を持たずに停滞を選択することは衰退の未来を招き入れてしまうということは現実でも確かに言える事だと思います。


 個人が停滞していても、世の中は進化し流れていきますからね、




錬金術師は何故錬金術師なのか?

 ここで少年を見送る彼女も

『砂漠の女性』としての自分と

『一人の女性』としての自分

との葛藤が描かれていますが、それは本書を読んでお楽しみください。


 錬金術師との旅の中で少年は錬金術士にこんな質問をします。

「貴方は何故錬金術師と呼ばれているのですか?」


「それは私が錬金術師だからさ。」

 素っ頓狂な返答をしてきた錬金術師に少年は切り口を変えて質問をし直しました。


「では何故、他の人達には金を作ろうとしても作れないのですか?何が間違っているのですか?」


「彼らはただ金だけを探しているのだ。彼らは宝物だけを求めており、実際に運命を生きようとは考えていないのだ。」


「では私がまだ知らない事はなんですか?」


「わしは錬金術師だから錬金術師なのだ。わしは親に錬金術を習った。親はその親に、そうして遡って行くとこの世の始まりに辿りつく。その頃に『大いなる作業』は一つのエメラルドに簡単に書かれた。しかし人間は簡単なモノを拒否した。その結果論文や解説書、哲学的研究が書き始められた。エメラルドは今も簡単なまま生き続けている。」


 この会話もとても奥が深いですね。

 自分は自分であって、それ以上でもそれ以下でもない。

 とてもシンプルで分かりやすい事ですよね?


 他にも様々な悩みごと。

 それらも一つ一つを深く考えて行ったら、実はとてもシンプルで簡単なことだったりします。

 本来はとてもシンプルで簡単なことでも、自分で勝手に複雑化してしまい、ワケが分からなくなってしまう。


 往々として有る事ですよね?

 物事は深くまで考えていくととてもシンプルで、簡単なこと。

 そのような意味で全てのことは繋がっている。


「一つの事が見えるようになったら、他の事でも同じように見えるようになり得るよね!」

ということかもしれません。




自分の心に耳を傾ける

 錬金術師との旅の間は少年と錬金術師との会話が続きます。


「私の心は揺れ動いています。僕の心は裏切り者です。私の心は自分の夢を持ち感情的になります。しかし砂漠の女性を思って情熱的にしては私に旅を続けて欲しくないのです。それでも私は自分の心に耳を傾けなければならないのですか?」


 錬金術師はこの様に答えます。

「それはそうだ。お前の心は『夢を追及しているとお前が今までに得たモノを全て失うかもしれない』と恐怖しているのだから。しかし、心を黙らせる事は出来ない。例え無視をしてもお前の心は常にそこに居て、お前に人生や世界をどう考えるか語り掛け続けて来るからな。」


 少年は納得がいかず

「それは例え心が私に反逆をしたとしても聞かなければならないと言う事ですか?」

と返した。


「反逆とは思いがけずやってくるものだ。もしもお前が自分の心に耳を傾け続け、自分の心のことを良く理解していれば、お前の心はお前に反逆する事は出来ない。何故ならお前は、心の中にある夢や希望を知り、それにどのように対処すれば良いのかを知っているからだ。だから心の声を聞いた方がよい。そうすれば不意の反逆を恐れなくて済む。」


 少年が自分の心の声に耳を傾けていると少年は自分の心が傷つく事を恐れている事に気付きます。

 そのことを錬金術師に伝えると

「それなら『傷つく事を恐れることは、実際に傷つく事よりも辛いモノだ』と心に教えてあげなさい。夢を追求している時は決して心は傷つかないものだからな。」


 少年はこのことを心に刻み

「私が宝物を探している時には途中で沢山のことを発見しました。それらのことは『羊飼いには不可能なことだ』と諦めていたら発見することが出来ない事でした。」

 そして少年の心は静かになった。


 この語らいの場面も好きです。

 と言うよりも、錬金術師との語らいはどれもとてもシンプルでいて、奥が深いのでどれも好きです。


 自分の心と向き合うと表現した方が現代では馴染みがあるかもしれませんね。

「自分は本当は何がしたいのか?」

 将来に悩んでいる高校生とか、大学生に多い自問自答ではないでしょうか?


 その答えは当然自分自身の中にあります。

 しかし、その心の声をそのまま聞く事が出来ないから悩むんですよね。

 それをしたら収入は?休みは?自分でやれるかな?世間からの見られ方は?等々。


 エメラルドの話じゃないですが、自分で物事を複雑にしてしまっているだけなんですよね。


 そんな世俗的なことを一端抜きにして、素直に自分がやりたいことを、そのまま受け入れることが出来たら、心はザワつかなくなるのかもしれませんね。




様々なトラブルと、エンディング

 錬金術師と旅立った少年がピラミッドの見える場所に辿りつくまで、幾つかの苦難が待っています。

 それらは全て、夢を追い求める上で経験したことや学んだ事で乗り越えることが出来ます。


 錬金術師として少年は成長をし、錬金術師と別れ、そして、少年はピラミッドの見える場所に辿りつきます。


 そこで少年は本当の宝物を見つけます。

 それは自分自身の夢の実現を信じさせてくれた様々な偶然。

 夢を実現するための行動に導いてくれた人々との出会い。

 『愛は夢野追求の邪魔をしない』と言った女性。

 自分の運命を実現する途中で、必要な事は全て学び、かつて夢見たことを全て体験することが出来た事実。


 これらこそが本当の宝物だったと気付いた時、少年はその場に泣き崩れていました。

 そして自分が流した涙の場所に神の使いとして知られる一匹のスカラベ(ふんころがし)を見つけます。


 そのことにも運命を感じ、その場所を掘り始めます。


 穴を掘っているとそこに部族間闘争の難民の一段が通りかかります。

「ここで何をしている?宝物でも隠しているんじゃないだろうな?俺達には金がいる!」

攻撃的な彼らの言葉に少年は恐怖します。


 折角見つけた宝物。

 それを殺されることで失う恐怖です。


 しかし、黙っていても殺されてしまうかもしれないため、少年は勇気を振り絞り

「何も隠していません。僕は宝物を探して掘っていたんだ!ここで宝物を見つける夢を2回見たからここに来て穴を掘っているんだ!」

と叫んでいました。


 すると一団のリーダーと思われる男が

「もうよい。この少年は何も隠していない。少年、俺達はもう行くぞ。お前は死ぬ事はない。」

と言いました。


 安心感から崩れ落ちた少年に対して一団のリーダーはこのように言って立ち去りました。

「少年、お前はこのまま穴を掘っていたら『人はそんなに愚かではいけない。』ということを学ぶだろう。ちょうどこの場所で2年前の事だ。俺も何回も同じ夢を見た。」

「『スペインにある平原で、羊飼いと羊が眠る廃墟となった教会に行け。そこにある一本のイチジクの木の根元を掘れば宝物を見つけることが出来るだろう。』と言うものだ。しかし、ただ何回も夢を見たからとの理由で、スペインの平原へ向かったり、砂漠を横断するほど俺は愚か者ではない。」


 一団が去った後、少年はピラミッドを見て笑った。

 彼は今、このピラミッドの見える場で宝物のありかを知ったのだった。


 その後少年は羊飼いをしていた頃に寝床にしていた廃墟となっている教会で宝石類の宝物を見つけ、少年の夢の中を生きる旅は一端の終結を迎えます。


 宝物はとても身近な、日常の中にあったわけですね。

 しかし、少年が夢を追い求め、旅をしなければその事に気づく事は出来ませんでした。

 当然廃墟となっている教会に植えられているイチジクの木の根元を掘り起こす事もしなかったと思います。




最後に

 この少年は、夢を追いかけたことで、様々な経験や様々な出会いを得ています。

 それをしなかった人達との出会いも含めて、彼の血肉となっています。


 そして最後には、少年と同じ暗示を受けていても、それを

「愚か」

と両断し、自分の心の声に耳を傾けずに生きてきたリーダーと出会う。


 少年とリーダーが対極にあるように描かれていますね。

 今回は記事と言うより、一つの小説に近い分量となってしまいました。


 果たして最後まで読み進めてくれる人がいるのか分かりませんが、もしもここまで読み進めてくれた貴方はこの少年の旅の物語に引き込まれている一人だと思います。


 絶対に読むべきです。

 私のつたない紹介ではその魅力の10分の1も伝え切れません。

 是非貴方も、心洗われて下さい。



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