介護現場で多く言われている尊厳とは、迷信のことである。

2019年11月1日

「格闘家の素手は凶器!喧嘩をすると罪が重くなる!」

 一度は聞いたことがありませんか?

「格闘家が喧嘩をすると、素手でも凶器扱いになって罪が重くなる」

と言う話。


 普通の人が人を殴ると暴行罪です。

 しかし、凶器で殴れば傷害罪や殺人罪に問われ得ます。


 そのため、格闘家の素手が凶器扱いなら、本来素手で殴るだけでは暴行罪になるところを、格闘家は素手でも殴ると傷害罪以上になってしまう。


 恐らくこのことを信じている人は多いと思います。

 しかし、結論から言うと、これは嘘です。

 そんな法律は存在しませんし、そんな判例もありません。


 私が警察官時代にもそんな事件を扱った経験は一度もありません。


 そして法律は、予め存在する法律以外で人を罰する事は出来ません。

 これを罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ)と言い、法律の絶対原則の一つとなっています。


 そのため、格闘家の素手は凶器扱いにもなりませんし、格闘家だと言う理由だけで罪が重くなることもありません。


 これはいわゆる迷信と言うモノです。


 格闘家に

「格闘家が試合で人を殴って良いのは違法性阻却事由という概念があるからだ。そのため試合以外では犯罪になる。そして犯罪としては、暴行罪と傷害罪が考えられる。その傷害罪の構成要件はこうで、暴行罪の構成要件はこうだ。そして法律には未必の故意と言う概念があり、それによると・・・」

 こんなことを教えて全ての格闘家が理解出来ると思いますか?


 そして、理解できたとしても、こんな教えで

「人を殴ってはいけない」

と戒めになると思いますか?


《人を殴る》

この選択肢が頭に浮かぶ状況と言うのは興奮状態にあります。


 そんな状況で法学概念なんかで感情を止められるはずがありません。 


 だから根拠部分が嘘でも、迷信を使った方が効果が高いと考えて作られたのかと思います。




迷信とは?

 辞書的には

《根拠を欠いており、道徳に反する誤ったことを信じる事》

とされています。


 しかし、日本において、昔から言われている迷信とは、むしろ逆です。


 日本で昔から使われている迷信は主に、

《根拠を欠いており、道徳を守らせるための誤り》

です。


 最も重要な道徳については、守らせる目的なのが日本で昔から言い伝えられている迷信の類です。


 先ほどの

格闘家の素手は凶器扱いで罪が重くなる》

もそうですよね?


 法律と言う根拠を欠いた誤りでした。

 しかし、その目的は格闘家が安易に格闘の技を人に使わないようにするためです。

 道徳的ですよね。


 他にも日本で昔から言われている

《道徳を守るための迷信》

を少し見ていきましょう。




日本に伝わる道徳を守るための迷信

<夜に爪を切ると親の死に目に会えない>

 これは昔まだ照明が発達していない時代の迷信ですね。

 照明がないため、暗い夜に爪を切ると指を切ってしまいます。


 だから、子供が指を切ってしまわないように作られた迷信だと思われます。

 道徳と言うよりも子供の体を守る迷信ですけどね。



<チョコレートを沢山食べると鼻血が出る>

 これはそれほど古くない迷信ですね。

 子供がチョコレートを食べすぎてご飯を食べなくなるとか、糖尿や肥満、虫歯等を予防するために作られた迷信かと思われます。


 昭和生まれの30歳後半より上の年代にはとても馴染みがある迷信かと思います。



<夜に口笛を吹くと蛇が来る>

 近所迷惑になるから騒がないように教えるための迷信ですね。


 子供に

「近所迷惑になるからダメ」

と言っても通用しませんからね。


 ちなみに、

《蛇が来る》

は私が子供の頃に言われたモノです。


 この部分は地域や家庭、年代等によって様々なようです。

 要は

《子供が怖がる存在》

なら何でも良いんですね。



<ご飯を残すとお化けが出る>

 いわゆる

《もったいないお化け》

と言うやつです。


 昭和生まれの人達なら、テレビCMでもやっていましたので馴染みがありますよね。


 実際に介護現場でも

「これ食べないともったいないお化けが出ますよ~」

と言うと焦って食べ始めるご利用者はいます。



介護現場で言われている尊厳とは?

<多く言われている尊厳を守る介護とは?>

 さて、迷信について色々と言ってきましたが、ここからが本題です。

 私は介護現場で言われている

《尊厳》

と言うモノはそのほとんどが迷信の類だと思っています。


 特に介護現場で最も多く言われている

《尊厳を守る介護》

の内容はこれです。


《本人に選択の機会を多く与える介護》


「尊厳と言ったらこれ!」

と言うレベルで頻繁に耳にします。


 しかし、これを=尊厳とする根拠はありません。



<尊厳とは道徳や倫理ではない>

 そもそも

《尊厳》

と言うモノは、人権を解釈する上で派生した考え方です。


 そして、人権とは、法学の概念です。

 人は生まれながらにして人権を持っていると法学では言っています。

 そのような法学の人権と言う概念から派生した考え方が尊厳です。


 つまり、尊厳をキチンと定義するためには法学上の解釈が必要になるんです。


 多くの人が

「尊厳とは道徳心とか、倫理観の分野で法学とはむしろ縁遠い存在だ!」

と勘違いしています。


 だからキチンとした定義に辿りつけないわけですね。

 法解釈による尊厳とは?についての詳細はこちらの記事をお読みください。



<格闘界の迷信と介護の迷信>

 尊厳とはどのような事を指すのか分かったところで、では何故介護現場では

《尊厳を守る介護=選択の機会を多くする介護》

と言われているのでしょうか?


 どこかで同じような現象を見ましたよね?

 そうです。

《格闘家の素手は凶器と同じ扱いで、喧嘩をすると罪が重くなる》

です。


 この迷信は何故根拠を欠いていようとも、広めたんでしたっけ?

 格闘家に法学を学ばせて、

「喧嘩はダメだよ」

とするよりも効果的だからですよね?


 その内容に根拠がなかろうと、行動的に

《他者を傷付けない》

と言う目的は達せられるわけですからね。


 介護の尊厳を守る介助として=選択の機会を多くするも同じです。



<介護が作業になってしまう>

「選択を多く与える介護が尊厳を守る介護である。」

とする根拠はありません。

 しかし、尊厳を守るためには必要な行動です。


 本人に選択肢を与える介護を推進しないと、介護職員が何でもかんでもやってしまいます。

 これでは残存機能維持等の面で不具合が生じ得ますし、介護が作業になってしまい得ます。


 介護職員に法学的な尊厳の定義を理解させて、

「理解してキチンと実践しろ!」

と指示するよりも、

「ご利用者の尊厳を守る介護とは、ご利用者本人に選択の機会を多く与える介護のことだ!」

とした方が簡潔具体的で実践しやすいですよね?


 だから、本当は根拠がないことでも

《尊厳を守る介護=選択の機会を与える介護》

として広めているのかと思います。


 つまり、日本の昔から伝わる迷信と同じなんですね。


 何度も言いますが、

《本人に選択の機会を多く与える介護》

は尊厳を守るために必要なことではありますが、イコールではないんです。




最後に

 私個人的に介護業界に広まっている尊厳とは、

「尊厳を法的概念で広めても理解は難しいから、迷信のような形にして広めよう!」

となっていると思います。


 しかし、それが逆に尊厳という考え方そのモノを見えにくくしているような気がします。


 どこの記事を見ても

「尊厳とはこれです!」

と簡潔明瞭に定義されておらず、長々と例示だけを示しています。


 それでは

「尊厳とは何なんだ?」

と疑問を持っている人達をスッキリさせることは出来ません。


 この状態が逆に、理解に苦しむ状況を作ってしまっていると感じます。


 一言で簡潔明瞭に、尊厳とはこれです↓↓↓


 迷信として伝えられている尊厳を理解し、実践できている貴方は、次の段階に上がるレベルに達している介護職員なのだと思います。


 キチンとした尊厳、法概念の尊厳を学んでみて下さい。

 法学とは暗記の学問ではありません。

 解釈の学問です。


 言葉をどのように解釈するかを無数に作り出す学問なんです。

 きっと貴方も言葉の意味や物事を考えること自体は嫌いじゃないですよね?

 その次の段階、レベルアップした先が法学です。


 法律家を目指すわけじゃないなら、そこまで難しくないですから是非チャレンジしてみて下さい!


 私も今の貴方と同じでしたが、法律家資格を取得できるくらいに法学を学べました!

 ここまで読んでくれた貴方なら大丈夫です!


 貴方なら子供に教える迷信の類ではなく、法学的な尊厳を学べます!

 レベルアップした貴方を楽しみにしていますね!



 最後に。

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