介護施設において、夜中布団の中に介護職員を引き込もうとするご利用者の言動を考える。

「介護業界はご利用者目線に立っていない!」

<固定概念>

 貴方が介護職員だとして、夜勤の巡視中にご利用者から

「一緒に寝ようよ」

と布団に誘われたとします。


 このようなことをされたら、まずどのようなことを考えますか?


 恐らく

「どのようにセクハラをなくすか?」

「どのように対応したら良いか?」

「困ったご利用者だ」

等ではないでしょうか?


 ここには一つ固定概念があることにお気付きですか?

 それは

「ご利用者の言動=性的意味」

です。


 介護現場におけるセクハラ問題を考える際、ほぼ全ての介護職員はその行為を性的目的の行為と捉えます。

 果たしてそれは本当でしょうか?



<心の受容>

 このような言動を受けたり、見聞きした際、貴方や貴方の施設では一度でもその裏にある心理を受容しようとしましたか?


 ここでの

《受容》

とは、性的訴えを受け入れると言う意味での受容じゃありませんよ。


 その裏にある心の受容ですよ。


 普段から

「ご利用者のことを考えろ」

とご利用者第一主義を掲げている介護職員が、何故性的な言動を伴うと、ご利用者のことを一切考えなくなるのでしょうか?


 もちろん、今現に苦しんでいる介護職員のための対策は早急に必要です。

 本当に性的な意味合いでの言動に対しては、今すぐにでも対策しなければならないことです。


 しかし、それとは別にご利用者の心を見ないで、表面だけを見て全てを

《=性的言動》

と捉えてしまう。


 これのどこが

「ご利用者のために」

なのか、全く理解できません。


 そこで今回は性的言動として、介護施設で起きる夜中布団に誘ってくるご利用者の心を考えてみたいと思います。


 なお、その他性的な意味合いがあるセクハラ問題については別記事で作成します。

 今回は夜中に職員を布団に誘ってくるご利用者の言動だけに注目して行きます。




夜中に布団に誘ってくるご利用者

<問題利用者のレッテル>

 介護施設経験がない人からすると少しビックリしてしまうかもしれませんが、夜勤中に布団を開けて

「一緒に寝よう」

と言ってくるご利用者がいます。


 介助しようと近づくと急に腕を掴んで布団の中に引き込もうとする等の行動が見られるご利用者もいます。

 私も何度も経験しています。


 恐らくこのような行動が見られると貴方の施設では

「あの利用者は問題だ!」

となるでしょう。


 しかし待って下さい。

 先ほども言いました。

 ご利用者の心理は何なのでしょうか?


 このような問題が発生した時に、少しでもご利用者のことを考えたことはありますか?


 そして知っていましたか?

 同じ形態の施設でもそのような行動が一切ない施設もあることを。

 これらを踏まえて、貴方に問います。


 その言動は本当にそのご利用者だけの問題なのでしょうか?

 是非この機会に少しだけでもご利用者のことを考えてみましょう。



<「淋しい」>

 私の経験上、布団に誘ってくる時の感情はこの

《淋しい》

であることが多いです。


 もちろん性的な意味ではありません。

 家族とも会えず、一人の状態の自分が淋しいんですね。


 特に介護施設だと就寝が早く、夜中に目が覚めるご利用者もいます。

 夜中に一人目が覚め、周りは真っ暗で静まり返っている。


 ふっとすると自分一人。

 自分は老いていく立場で、他の人達の力を借りないといけない状態。


 貴方だったら、淋しくないですか?


「あのご利用者がそんなハズないから、知らないからそんなこと言えるんだよ」

ではなく、

「そのような心情を考えたことはありますか?貴方だったら淋しくないですか?」

と聞いています。


 少しでも理解は出来ると言うなら、いきなり

「酷いご利用者だ!セクハラ老人」

ではなく、寄り添えませんか?


 今の施設ではそのようなご利用者は一人もいないのですが、以前の施設で布団に誘われた時は、寄り添いました。


「自分の今置かれている状態に何とも言えないやるせなさがあり、悲しいんだな」

と考えて、目線を合わせて、手を握り、頭をポンポンします。


 すると布団の中には引き込んできません。

 その多くはそのまま安心して眠りにつくか、泣き出します。



<寄り添うと泣き出す>

 貴方は知っていましたか?

 セクハラ言動をしてくるご利用者に寄り添うと泣きだすことを。


 本当に性的な意味合いで、そのような言動をしてくる人に対して寄り添った場合に泣き出すと思いますか?


 性的な気持ちが高い時に相手が寄り添ってきたら貴方は泣き出しますか?


 普通は泣き出しません。

 寄り添うと泣き出す事もある、夜中布団に誘ってくるご利用者の気持ちは本当に性的な意味合いなのでしょうか?


 貴方はこの行為を傾聴や受容をしようともせず、

「今やっている仕事が終わってからね」

「ダメ!ふざけないで」

「何言ってんの!」

のように適当にあしらっていませんか?


 泣き出しそうな心の状態のご利用者に対して、この介護職員の言動は適切な介助ですか?


 ご利用者が何故このような行動に出るのか?については後述します。



<「怖い」>

 これも淋しいに近いので、淋しいと言う感情を理解出来たなら怖いと言う感情も理解出来ると思います。


 状況は同じです。

 老いた自分と周りに家族が誰一人もいない、死を待つだけの自分。

 周りは静まり返っており、世の中に自分だけ取り残されたかのような状態。


 とても怖くないですか?

 自分がいつ亡くなるのか否応なしに考えさせられます。


 恐怖の中にいるときの布団に誘う言動は

「怖いよ、死にたくないよ」

と訴えかけているのと同じです。


 これほどまでの恐怖の中で、普通の人間は何かにすがりたくなります。

 少しでも恐怖を和らげるために、誰かと少しでも長く一緒にいたいと願います。


 布団に誘ってくる時は、このような恐怖の感情の中にいることもあるんです。


 最低でも《淋しい》の時と同じで、寄り添う必要性が見えてきませんか?


 もっとも、恐怖の場合は寄り添うだけではなく、言葉でその恐怖そのものを消せると尚良い気はします。

 そのための手段はこちらをお読みください。


 自分が消えていく感覚の中で貴方を少しでも引き留めたいのに

「何言ってるの!」

と切り捨てられる言動をされ、施設からは問題利用者とのレッテルだけ付けられる。


 もう一度問います。

 これが適切な介助ですか?

 これが貴方の理想とする介護なのですか?




何故性的言動をしてくるのか?

<セクハラがない施設もある>

 ここで一つ疑問が出てきますね!

 それは

「淋しさや恐怖から職員を引き留めたいなら、別に他の方法で良くない?何で布団に誘うとか引き込むとか性的なことと連動される行為をするの?」

と。


 もちろん推測ですが、これについては

◎、布団に誘う等の性的言動をするご利用者がいる施設

と、

◎、布団に誘う等の性的言動をするご利用者がいない施設

との違いを見ればある程度説明が付くと思います。


 先ほども言いましたが、前いた施設では結構頻繁にありました。

 しかし、今の施設では一切ありません。

 他の職員からも一切聞きません。


 布団に誘う云々だけではなく、職員が苦しむようなレベルのセクハラもありません。


 恐らくですがその違いは、職員やご家族のご利用者との関わり方の違いだと思います。


 一つずつ見ていきましょう。



<面会の回数>

 前の施設はご家族の面会は行事を除いて半年に3件くらいでした。

 今の施設は概ね一日5~10件くらいです。(半年で約900~1800件


 ご家族の面会件数が圧倒的に違いすぎますよね。

 先ほどご利用者の心情部分で少し言いましたが、自分の周りに家族がいない状態が淋しいんですね。


 それでも、今の施設でも

「淋しい。家族はいる?連絡をして」

は言ってきます。


 しかし、これを言葉としてストレートに職員に言えるんですよ!

 前の施設ではこれを言葉にして言うご利用者はほとんどいませんでした。


 この違いはご利用者の言動に明らかに大きく影響していると言えます。


 このように

「家族に会いたいよ。」

と訴えてきたご利用者に

「何言ってるの!」

と突き放し、問題ご利用者のレッテルを張りますか?


 布団に誘ってくる等の行動と訴えかけ方が違うだけで、やっている事は同じですからね。



<職員の態度>

 普段からの職員の態度も大きく影響があると思います。

 前の施設では基本的に職員はやることが多すぎてご利用者と向き合うのは二の次でした。


 空いた時間にご利用者とコミュニケーションをしていたら

「何やってんだ!遊んでんじゃない!」

と怒鳴られたこともあります。


 余談ですがその怒鳴ってきた職員は私に対してこのようなパワハラをしてきた職員ですので、興味があればどうぞ。


 今の施設は基本的に空いた時間はご利用者とコミュニケーションを取っていないと悪目立ちをします。


「そんなことをやっている暇があったらご利用者とお喋りするなり、散歩に行って来なさい!」

と言う感じです。


 当然ご利用者の訴えを聞こえない振りすることはNGです。

 前の施設では聞こえない振りをして素通りをしている職員は物凄く多かったですが。


 ナースコールを押したご利用者を怒ることもしません。

 前の施設では

「なに?(怒)」

と言う職員が多かったです。


 どうですか?

 ご利用者が布団に誘ってくる貴方の施設では、職員の態度で私の前の施設と同じような部分はありませんか?



<職員を引き留めたい>

 ご利用者は夜中静まり返った暗闇の中一人。

 そんな淋しさや恐怖の中に職員さんが入ってくるとすがる為に引き留めたいんです。


 ここで考えて下さい。

 普段から職員からのコミュニケーションが少なく、ご利用者から訴えても適当に流されることが多い環境。


 この環境において、職員さんを引き留めるためにはどうしますか?

 普通のやり方では直ぐどこかに行ってしまいます。

 ナースコールは怒鳴られます。


 どうしますか??

 お金とかお菓子とか、何かあげるモノがあれば良いですが、施設では入所時に預けているのでそれもないわけです。


 ではこの職員さんを長く引き留めるために、ご利用者はどうすれば良いのですか???


 布団を開けて来るように言うとか、近づいてきた時に引っ張る以外に何か思い浮かびますか?



<「このご利用者はない」>

 いつもバカばっかりやっているとか、他者にメチャクチャ厳しい態度とか、他者を寄せ付けないで介護拒否が激しいとか、物静かで普段から声を発する事もほとんどないご利用者とか。

 こんな人達が布団に誘ってくることもあります。


 これらは全部私を夜中に布団に誘ったり、腕を引き込んできたご利用者達の特徴です。


 確かに普通のその姿だけを見ていたら

「このご利用者が淋しいから?怖いから?あり得ないでしょう」

となり得る気持ちもわかります。


 だから序盤で

「ご利用者は本当は淋しいんじゃないですか?」

と問いかけた時に、

「あのご利用者がそんなハズないから、知らないからそんなこと言えるんだよ」

と思ったのではないでしょうか?


 もしも貴方がそのように感じたのなら、私からはこう問いたいです。

「貴方こそ、そのご利用者の何を知っているのですか?」

と。


 この程度の心の寄り添いすら考えることもせず、ADL等の書類情報しか把握していない程度で、そのご利用者の何を知っているつもりになっているのですか?


 そのご利用者は本当に問題ご利用者ですか?


 書類ではなく、ご利用者本人、そしてその裏にある心と向き合ってみませんか?

 それを許さない風土の介護施設でも、夜勤中は可能なはずです。


 先ほども言ったように、私の前いた施設はそのようなご利用者とのコミュニケーションを

《そんなこと》

《遊んでいる》

と怒鳴られる風土でしたが、私は寄り添いました。


 夜勤中に座ってぼぅ~っとしていたり、スマホをいじる時間を作りたいのは分かりますが、その時間を少し減らしてベッドの横に居てあげることは出来ますよ。




最後に

 このようなことを熱を持って発言していると勘違いする人がいるのですが、私は基本的に職員第一主義者です。


 職員をご利用者よりも先に大切にしないと話にならないと考えています。


 その上でのこの程度の基本的な、ご利用者を考える介護です。

 今回私が言っている事は職員第一主義者でも容易に考えられる程度の基本的なモノです。


 それなのに、普段から

「ご利用者の為に!ご利用者の為に!貴方は介護職員でしょ!」

と介護職員を蔑ろにしがちなご利用者第一主義者がこのような問題に面した時に

「あのご利用者は問題ご利用者だ!」

と寄り添うことすらしない事が理解できません。


 普段からご利用者第一主義をうたっている人達は、本当にご利用者のことを見ているのでしょうか?


 そこは分かりませんが、どちらにしても、ご利用者にもっと寄り添ってみませんか?


 そして、そのような言動をご利用者にさせない介護を目指しませんか?


 ご利用者からのこのような言動は失くせます。

 そのような言動が出始めたらご利用者は疎外感を持っているということです。


 それを一つの目安として自分達の介護姿勢を見直しませんか?

 ご利用者は人間です。

 意味もなくそんな行動はしません。


 ご利用者の言動の裏にある心に寄り添える介護職員、カッコ良くないですか?


 少しでも

「それはカッコイイ!」

と思ったなら、貴方がそのカッコイイ介護職員になりましょう!


 この記事をここまで読んでくれた貴方ならなれます!

「何言ってんだこいつは」

と思った人はここまで読めません。


 だから、ここまで読めた貴方なら、そんなカッコいい介護職員になれます!

 私は信じていますよ!



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