【介護スキル】食事介助をしても口が開かない、ご飯を食べない高齢者の食事介助のコツ5選【原因を考える】

2020年5月12日

 認知症が進行し、食事介助が必要な高齢者。

 食事を口に運べば、口を開いてくれて、スンナリ食べてもらえれば問題なし。


 しかし、そうスンナリ食事介助が進むことはありません。


 多くの場合は

「食事を拒否されてしまう」

「口に入れば食べてくれるけど、そもそも口を開けてくれない」

「口の中に溜めこんでしまい、飲み込んでくれない」

等の壁にぶつかります。


 そうなると介護施設では

『早く終わらせたい』

という気持ちと共に、食事介助が雑になってしまいがちです。


 そんな先輩の姿を見て後輩や新人職員が疑問を持ってしまう場面を多く見掛けます。


 そこで今回は従来特養で10年以上勤務し、

「このご利用者全然ご飯食べてくれない」

と看取りまで落ちたご利用者にもご飯をシッカリと食べて貰い、回復させた経験のある私が、食事介助のコツをご紹介します。


「そのような食事介助のコツを知りたいです!」

という貴方は是非参考にして下さい。


 そこで今回ご紹介する食事介助のコツは5点。

◎、キチンと眠れているのか確認する

◎、お腹が空いているのか考える

◎、まだ口の中に入っていないか確認する

◎、キチンと呼吸が出来ているか確認する

◎、五感を刺激する


 これらを実践することで、ご利用者にキチンとご飯を食べてもらえるようになります。

 そのことにより、看取り解除まで回復するご利用者も出てきます。


 貴方自身も

「先輩凄い!奇跡を起こした」

と評価があがります。


 なお、

「コツの前に、食事介助の基本を知りたいです」

と言う貴方はこれらの記事を先にお読みください。


>>>食事介助の基礎知識。適切な姿勢は?テーブルの高さは?『準備編』


>>>食事介助の基礎知識。嚥下の確認方法は?食べるペースは?『介助編』


 それでは食事介助のコツを詳しく見て行きましょう!





食事を食べない高齢者の食事介助のコツ『キチンと眠れているのか確認する』

<人は食事より眠り優先>

 結論:『眠れていないと食事どころではない』


 食事が食べられずに、看取り対応にまで落ち込んでしまったご利用者。

 その際に一番最初に確認して欲しいのが

『睡眠』

です。


 私が知る限り、食事が食べられなくなったことから看取りまで落ちて行くご利用者の多くはキチンと眠れていません。


 実際に今年(2020年)に看取りになった直後、私が看取り解除まで回復させる事が出来たご利用者は

『キチンと眠れていなかった』

が原因でした。


 その際の詳細な状況に関してはこちらの記事をお読みください。

>>>余命宣告を受けたご利用者の命を救った介護の奇跡


 人は寝不足だと食欲が減退します。

 寝不足と言うのは横になっていると言う事ではなく、体や脳の修復がキチンと行えている深い眠りのことです。


 それがキチンと出来ていないと、体が食事よりも睡眠を欲するので食事が摂れなくなるんですね。


 まさに結論として最初に言った通り、

『食事どころではない』

ということです。



<安楽な姿勢と床ずれ予防姿勢>

 介護での体位交換は

『背中の角度30°が良い』

と盲信されています。


 しかしそれは誤りです。


 それは

『褥瘡(=床ずれ)予防のため、体分圧性に優れている体位』

と言うだけで、睡眠のためという観点ではないんですね。


 実際に自分自身で背中に介護クッションを入れてやってみて下さい。

 仕事に行けなくなるレベルで体が強張り、疲れ切ります。


 背中の角度30°の体位は、床ずれ予防にはなるけれど、安楽ではないんです。


 食事が食べられなくて看取りまで落ち込んでしまったご利用者には是非安楽な姿勢を取って貰い、睡眠第一で考えてみて下さい。


 キチンと安楽に出来ていれば物凄く呼吸が安定し、恐ろしいほど眠りこけます。

 その後に食事が食べられるようになりますよ。




食事を食べない高齢者の食事介助のコツ『お腹が空いているのか考える』

 結論:『空腹じゃなければ食べられない』


 看取りのご利用者に限らず、食事全介助の高齢者は日常生活の中でほとんど動きません。

 動かなくてもカロリー消費は必要ですし、消化は進みます。


 しかし、動いている人よりは空腹になる時間は遥かに遅くなります。


 私達介助者だって

「今日は食欲ないなぁ~食べたくないなぁ~」

という時は結構ありますよね?


 ご利用者だって同じです。

 いえ、むしろご利用者の方が多いくらいです。


 それなのに、

『全量摂取が正義!』

と考えている介護職員が多いですよね。


 この辺り

「食欲がないのかなぁ?」

も視野に入れた食事介助は必須です。


「そうは言っても会話が出来ないので判断が難しいよ!」

との意見があると思います。


 その時には、ゲップやウプウプする感じに注目して下さい。

 それが一度でもあり、食の進むが悪ければ

「食欲がない」

との考えを考慮に入れるべきです。


「口が開かなくてずっと食べていないんです!空腹に決まっています」

と言うご利用者への食事介助のコツは今からお伝えしますので、最後までお付き合いください。




食事を食べない高齢者の食事介助のコツ『まだ口の中に入っていないか確認する』

 結論:『高齢者のペースで食事介助を行う』


 介護職員でも、ご家族でも、食事介助をする時に急ぐ人が多くいます。

 介助者として他にもやらなければならない事が沢山ありますからね。


 しかし、それでは高齢者本人にとってはとても食事ペースが早過ぎるんですね。


 私達なら一度で飲み込めるくらいの食事量でも、高齢者では何回かに分けないと飲み込めません。


 それを一回飲み込む度に口の中へ新たな食事を詰め込もうとするため、口の中に食事が溜まっていってしまうんです。


 私達だって口の中に食事が溜まった状態で、次々とご飯を詰め込まれては飲み込むのが困難になります。

 食欲だって減退しますし、何より苦痛です。


 キチンと口の中の食べ物を全部飲み込んだのか確認してから次の一口を介助するようにして下さい。




食事を食べない高齢者の食事介助のコツ『キチンと呼吸が出来ているか確認する』

 結論:『鼻づまりを確認し、一口飲み込む度に深呼吸』


 人は飲み込むと言う動作を行う際に息を止めています。

 1回1秒もないので、普段意識をしていないだけです。


 しかし、高齢者は私達よりも嚥下(飲み込む)能力が低下しているため、息を止めている時間が長くなります。


 そのため、口の中に食事を入れる速度が速いと物凄く息苦しくなるんです。


 私達だって、

「ほぼ呼吸をしないで食事を食べろ」

と言われたら溺れてしまうくらい苦しい思いをします。


 食事介助の速度が速いとそれを高齢者に強要している事になるんです。


 だから、苦しい思いをさせないために、結論でも言った通り

『食事を飲み込んだ後に深呼吸』

なんです。


 この辺り

「どのくらい息を止めている事になるのか?」

等の数字はこちらの記事を参照下さい。

>>>食事介助スキルの基本『嚥下速度』


 食事介助の速度を気にしつつ、他に気を付けて見るポイントが

『鼻づまり』

です。


 鼻が詰まっていると口呼吸だけになります。

 すると飲み込む瞬間だけではなく、食事を咀嚼(噛んでいる)時間も息を止めている事になります。


 ハッキリ言って地獄です。

 こんな地獄で食事をまともに食べられるハズがありません。


 食事介助において、鼻づまり解消は物凄く重要な要素です。




食事を食べない高齢者の食事介助のコツ『五感を刺激する』

 認知症の進行によって食事が全介助の高齢者にとって、食事は基本的に恐怖です。


 何故か?

 多くの介助者はご利用者に何も分からない状態で口に”何か”を入れているからです。


 貴方も友人や家族にやってもらえば分かります。

◎、目隠しをする

◎、食べ物に限定せず、何でも良いので口に詰め込む

これをして貰って下さい。


 かなり怖いと思います。

 認知症高齢者は食事の際にこれをされているんです。

 だから基本的には恐怖なんです。


 そりゃあ口も開けたくないですよね?

 つまり逆を返すと、

『この恐怖心を出来るだけ解消すれば、安心して口を開いてくれやすくなる』

ということです。


 その方法が

『五感を刺激する』

という方法になります。


 五感(覚)とは

◎、聴覚

◎、視覚

◎、嗅覚

◎、触覚

◎、味覚

です。


 今から紹介することを見ると貴方は

「そんなの無理」

との感想を持つと思います。


 しかし、やる前から、最初から

「無理」

と切り捨てるのではなく、まずはやってみて下さい。


 話はそれからです。

 実際に、介護業界の中でも特に人手不足で、時間に追われ、大変だと言われている従来特養でこれら全てが行えているんですからね。


 工夫や慣れによって必ず貴方はこれら全てが行えるようになります。


 折角

「食事介助を今よりも成長しよう!」

とここに辿りついたわけですから、少し頑張ってみませんか?


 では具体的にどう言った介助なのかを、それぞれの感覚ごとに簡単に触れて行きます。



<食事介助で聴覚を刺激する方法>

 結論:『メニューの説明をする』


 食事を介助する際に

「ご飯ですよ。温かいですよ。」

「サトイモの煮物ですよ。温かいですよ」

「甘い桃のゼリーですよ。少し冷たいですよ」

のように説明をします。


 これを一口ごと毎回行います。

 一度言っても短期記憶、つまり直近のことは忘れてしまっていることが多いですからね。


 毎回これを行うことで食事を介助されることの恐怖心が少し軽減します。



<食事介助で視覚を刺激する方法>

 結論:『食事を見せる』


 今から何を口に入れるのかを言葉で説明するのと同時に、目でも見てもらいます。

 もちろん、その方法は目の前にスプーンを持って行き、食事を見てもらうことです。


 自分の食事介助を思い出してみて下さい。

 食器から直接口に持って行っていませんか?


 それでは今から何が口に運ばれるのか見えません。

 最初に紹介した実験で目隠しをして貰ったのはそのためです。


 ご利用者の多くは食事介助で、口に何を入れられているのか見れないまま口に詰め込まれているんです。

 これも恐怖です。


 だからキチンと見えるようにしてから口に持って行くと、これも恐怖心が少し軽減します。



<食事介助で嗅覚を刺激する方法>

 結論:『口に入れる前に匂いを嗅いでもらう』


 耳で聞いて、目で確認しただけでも良いのですが、もっと安心して貰うためには匂いも重要です。

 食事の味や食事だと感じるためには嗅覚は物凄く重要ですからね。


 テレビ番組で、鼻を詰まんで味覚だけで何の食べ物か当てるゲームがありますよね。

 多くの人が間違えるのを見れば分かるように、味・食事において匂いが重要な事の証拠です。


 これも恐怖心を少しは軽減します。

 もっとも、恐怖心を軽減するよりも、食事を味わう側面の方が強いかもしれません。



<食事介助で触覚を刺激する方法>

 結論:『空のスプーンでスイッチを探す』


 恐怖心だけではなく、そもそも食事との認識がないケースもあります。

 そんな時には空のスプーンで口周りの様々な部位を刺激してみましょう。


 そのことによって口が開くことが多くあります。

 刺激部位に決まりはありませんが、何となく私が刺激する部位は

◎、下唇の前側

◎、左右の口角

◎、歯

◎、舌

◎、内ホホ

辺りです。


 口が開いて貰えなくても、空スプーンだけなら安全に口腔内に入る事が出来ます。

 そのため、口腔内の刺激も行える時には行います。

 歯ぎしり等、歯を食いしばられてしまうと無理ですが。


 あくまでも食事と認識してもらうための刺激です。

 そのため、口の中に入ったスプーンをテコの原理のようにして無理矢理口を開けるような事は絶対にしないで下さい。


 恐怖心を増すだけです。

 更にその行為によって怪我をします。



 この口周りを刺激する方法は、口を閉じてもらうためにも活用できます。

 ご利用者の中には食事を口に入れる事はできても、口を閉じてくれずに流れ出てしまう人もいます。


 その場合には、空のスプーンの背面の丸い部分で下唇を下から上へと何度も軽く刺激し続けます。

 すると口が閉じます。


 やり方や誰がやるのか等も影響があるかもしれませんが、私は90%以上はこの方法で口を閉じてもらえています。


 この場合もスプーンで無理矢理口を閉じさせるような事はしないで下さい。

 苦痛や恐怖を与えたら悪化するだけです。


 もしもそのような食事介助をしており、ご利用者が口を開けてくれず、食事量が減り、衰退した場合。


 それは寿命や老衰ではなく、

『人災』

だと私は思います。


 法的には特に人災と判断される事はないでしょうが・・・



<食事介助で味覚を刺激する方法>

 結論:『味の濃い物。甘い物を少量味わってもらう』


 味覚を刺激するためには舌に食べ物を触れさせる必要があります。

 実は口が開かなくてもその方法はあります。


 触覚を刺激する際にも言った通り、スプーンだけなら口腔内に滑り込みます。

 その際にスプーンに味覚を刺激するモノを付けておくんです。


 高齢者の味覚の関係上、甘い物がベストです。

 ポカリスエットとか、缶詰フルーツのシロップのような甘いモノですね。


 その刺激によって

『食』

を意識して貰えて口が開きだす高齢者も多くいます。


 高齢者の味覚は苦みと甘みが最後まで残ると言われます。

 だから甘い物が好きな高齢者が多いんですよね。


 他の味覚は弱まっており、感じにくくなっているので味付けが濃くないと美味しくないんです。


 介護施設で強い塩味は付けられませんし、この方法では少量しか口に入れられませんので、甘みがベストなわけです。




まとめ

 それでは最後に

『食事介助をしても口が開かない、ご飯を食べない高齢者の食事介助のコツ5選』

についてまとめて終わりにします。


 キチンと眠れているのか確認する。

 人の体は食事よりも睡眠の方が優先。

 安楽な体位が重要。


 お腹が空いているのか考える。

 高齢者はお腹が空きにくい。

 ゲップやウプウプに注目する。


 まだ口の中に入っていないか確認する。

 高齢者は一口を何度かに分けで飲み込む。

 自分のペースではなく、高齢者のペースで介助をする。


 キチンと呼吸が出来ているか確認する

 食事は息を止める行為でもある。

 高齢者には一口飲み込むごとに深呼吸をしてもらう。


 五感を刺激する。

 食事の説明をし、食事を見え、匂いを嗅いで貰う。

 これを一口ごと毎回行う。


 それでも無理なら空のスプーンで口周りを刺激しまくる。

 甘い物をスプーンに付けて舌を刺激する。



 今回ご紹介した細かいスキルやコツは、最悪忘れてしまっても構いません。


 ただし、ご利用者にとって、基本的に

『食事は恐怖』

この意識は是非忘れずに覚えておいて下さい。


 これだけ覚えていれば、貴方の食事介助のやり方や向き合い方は絶対に変わりますので。


 食事介助の気遣い不足でご利用者の人生に幕を閉じるのはあまりに不幸過ぎます。

 ご利用者にとっても、介助者にとっても。


 情報は実際に行動しなければ意味がありません。

 貴方はこの情報を得て行動する人ですか?

 それとも行動せず無駄にする人ですか?


 それを決めるのは貴方次第です。



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