【介護】食事介助の基礎知識。適切な姿勢は?テーブルの高さは?『準備編』

2020年5月12日

 食事介助が雑な介護施設が多いです。

 新人介護職員は、そんな雑な先輩の食事介助を見て育ちます。


 しかし、そんな先輩達の姿に疑問を持つ介護職員も多くいます。


 そこで今回は、そのような介護職員向けに

『正しい食事介助の基礎知識』

を解説していきます。


 今回説明する食事介助の基礎知識は、『準備編』と題して

◎、食事の姿勢

◎、テーブルとイスの適切な高さ

◎、食器の色

◎、食事の際の音楽

の4点についてです。


 この記事を読む事で、感覚だけで身に着けている食事介助の準備が、適切な知識として身につきます。


 食事介助のあり方に疑問を持っている介護職員だけではなく、後輩・部下に教えるベテラン介護職員も説得力のある説明が出来るようになります。


 なお、食事介助の基礎知識として介助スキルについてはこちらの記事をお読みください。

>>>食事介助の基礎知識。嚥下の確認方法は?食べるペースは?『介助編』


 食事介助時に口が開いてくれないご利用者の具体的な介助方法のコツ等についてはこちら。

>>>食事介助をしても口が開かない、ご飯を食べない高齢者の食事介助のコツ5選


 それでは、それぞれについて詳しく見て行きましょう!





食事介助、準備の基本『食事の姿勢』

 食事姿勢で気を付けるべきポイントは3つです。

◎、顔はやや下向き

◎、体はやや前傾

◎、足底は全面が床に着き、やや後方に引く


 図で見るとこんな感じです。

画像はキューピーサイトより引用


<なぜ顔はやや下向きが良いのか?>

 結論:『喉奥に送り込む際に、食べ物を持ちあげる動作をするから』


 人が食べ物を飲み込む時の動作を考えると、顔はやや下向きが適切になります。

 人が物を飲み込む時の動作とは

①、喉奥に送り込む(持ちあげる)

②、飲み込む(落とす)

です。


 つまり、最初に食べ物を上げる動作が無意識に身についているので、顔をやや前傾にしておかないとむせるんです。


 介護職員でも、看護職員でも食べ物を溜めこみやすいご利用者の顔を上げたがる職員がいます。

(=リクライニング車イスの背もたれを倒す)


 彼らがそうする理由は、顔がやや下向きだと口から食べ物が落ちてきてしまうからですね。


 しかし、顔を上げ過ぎてしまうと最初から口の中で食べ物が上がった状態になります。

 その状態から更に上げる動作をするため、いきなり喉奥に食べ物が入ってしまいます。


 だからむせやすくなるんです。

 するとこうなります↓↓↓


『飲み込み動作を意識していないと顔を上げる姿勢にする』→『むせやすい人と勝手に判断』→『むせると即食事終了』→『摂取量が少なくなる』→『衰弱していく』


 老化によって嚥下能力が落ちるのは本当です。

 口から出てしまう対策として顔を上げる対策自体は問題ありません。


 問題なのは

『上げ過ぎる事』

です。


 では顔を上げる限度。

 その見方をご紹介します。


 下図のように、耳と口角を繋いだ線を意識します。

 食事介助中はスプーンでこの赤い線の代わりをやると見やすいです。

正常な状態

 この赤の線で、口角の高さが上がれば上がるほどむせ込みやすくなります。

 限界点は、口角の高さが耳の高さを超える時点です。


 どんどんアゴが上がってしまうご利用者いますよね?

 そのようなご利用者は口角の位置がすぐ耳より高くなります。


 そうなったら食事を辞めましょう。

 その状態で食事介助をするのは誤嚥リスクが余りにも高過ぎます。


 基礎編では触れませんが、恐らく呼吸が苦しいからアゴが上がるのだと思います。


ムセやすい状態


 これの体験方法は、

『上を向いた状態で水を飲む』

これをしてみて下さい。


 若い人なら嚥下能力の高さでむせる事はないかもしれませんが、とても飲み込み難い事を体験出来るハズです。


 この状態で食事を次から次へと、早く口に押し込まれたら地獄ですよね。



<何故体はやや前傾が良いのか?>

 結論:『嚥下で使う筋肉が動きやすくなるから』


 体をやや前傾にすると舌~喉に掛けての筋肉が動きやすくなります。


 つまり、嚥下に関係する筋肉が効率的に動く姿勢がやや前傾です。

 どの程度前傾になるのが一番良いのか?


 それは

『真っすぐ体が伸びた状態から指3本分くらい前傾』

です。


 これを自分で体験するなら、壁に寄りかかり、腰・背中~後頭部も全部壁に着けた状態で水を飲んで下さい。

 とても飲み込み難いことが経験出来ます。


 ここまで聞くと

「円背の人はどこに合わせれば良いの?」

との疑問も沸いてきますよね?


 それも基礎編で触れられる内容ではないので、応用編で書く予定です。


 ちなみに、私の言っている

『基礎編とは、介護職員向け』

『応用編とは、理学療法士の先生が教えているような専門的な内容』

と分けています。



<何故足底は床に着けて、やや後ろに引くのが良いのか?>

 結論:『上半身の前傾に下半身も合わせないと苦しいから』


 顔がやや下向き、体がやや前傾の姿勢。

 この状態で足が前に出ていたり、直角になっていたら内臓が軽度圧迫されます。


 上半身の基本姿勢と合わせると、足の位置は、やや後方に引く方が自然な姿勢なんですね。


 そのため、車イスで足が後方に行かないようにベルトを張って止めているご利用者は、食事の時にはベルトを外しましょう。


 食事の際の基本で最も重要なことは、ともかく姿勢です。

 その上で、他の部分にも気を付けて行く形にします。


 では、姿勢が理解できたところで、その他の気を付ける部分も軽く見て行きます。




食事介助、準備の基本『テーブルとイスの適切な高さ』

 結論:『適切な計算方法がある』


 介護施設だと椅子とテーブルが画一的で、体格差に関係なく同じ物が使われています。


 そうすると、テーブルが高いことが原因で

◎、食事が食べ難くて残す

◎、食事の残量が見えなくて残す

という事が起きます。


 そこで、あまりにテーブルの高さが合わない小柄なご利用者には、高さ調節のできるオーバーテーブルを使って対応します。


 では、オーバーテーブルを使うとして、適切な高さはどのくらいでしょうか?


 私が知る限りの介護職員は全員

『感覚』

で調整しています。


 しかし、適切な高さは数値で存在しています。

 その高さを今からお教えしますので、感覚で高さ調整をしている貴方は、次からは適切な数値に合わせてあげて下さい。


 適切なテーブルの高さは

『椅子の高さ+座高÷3』

です。


 これは厳密には少し違うのですが、計算がゴチャ付いてしまうので、シンプルな形で紹介します。


 これに沿ってテーブルの高さを調整するとこうなります。


 介護施設で椅子等の備品の高さ調整は難しいでしょうから、椅子の高さは標準規格の高さ(42センチ)にします。


 座高が90センチあるご利用者にとっての適切なテーブルの高さはこうなります。

『椅子座面の高さ+座高÷3=適切なテーブルの高さ』


42センチ+90センチ÷3=72センチ

つまり、座高90センチのご利用者に合ったテーブルの高さは72センチになります。


 座高が60センチと小柄なご利用者に適切なテーブルの高さはどうでしょうか?

『椅子座面の高さ+座高÷3=適切なテーブルの高さ』


 42センチ+60センチ÷3=62センチ

 つまり、座高60センチのご利用者に合ったテーブルの高さは62センチになります。


 このように適切なテーブルの高さを調節してあげて下さい。




食事介助、準備の基本『食器の色』

 結論:『ご利用者の見え方に合わせる』


 前項のテーブルの高さが高すぎることで

『見えない』

が原因で食事を残すご利用者がいると言いました。


 テーブルの高さだけではなく、色覚の関係で見えずに残すご利用者も多くいます。


 例えば、

◎、白米の茶碗が白色

◎、煮物やみそ汁の器が茶色

◎、緑茶の湯呑みが緑色

等々。


 もしそのような状態で、ご利用者が頻繁に食事を残すようなら、食器の色が原因かもしれません。


 これは介護職員が思っている以上に効果絶大です。


 実際に私が以前勤めていた介護施設では全ての食器の色を

『ご利用者に見やすいように』

と入れ替えただけで食事の残量が大幅に減少しました。


◎、白米は黒い茶碗

◎、煮物や汁、おかずは白い器

◎、お茶は白い湯呑み

このようにしただけです。


 介護職員目線だとお洒落さとか、食事と合う色合いの食器とかで選択しがちです。

 しかし、高齢者は職員と見え方が違うわけです。


 お洒落さ等の見た目を蔑ろにして良いとは言いません。

 しかし、その基準が介護職員の基準になっているのが問題なんです。


 ご利用者にどのように見えているのか?

 この基準で食器は選びましょう。




食事介助、準備の基本『食事の際の音楽』

 結論:『ジャズが良いと言われる』


『食事時間にテレビを点けていると気が散って誤嚥リスクが高まる』

と言う理由から、食事の時間にはテレビを消して音楽を掛けている介護施設も沢山あります。


 私が知っている介護施設だとオルゴール音やクラシック、自然のせせらぐ音を流している施設が多いです。


 それらにはリラックス効果があるため、食事を落ち着いてゆっくり行えるようです。

 そのため決して悪くはありません。


 しかし、ご利用者がリラックスして、ゆっくり食べていたら介護職員の貴方はどうでしょうか?


 完全なご利用者ファーストで、

「幾らでもご自由にどうぞ!」

と出来る介護施設なら問題ありません。


 しかし、恐らく貴方の介護施設は違いますよね?

 リラックスして、安全に食べてもらいつつ、時間内にある程度食べ切って貰う必要があるのではないでしょうか?


 綺麗事は抜きにして、本音で、そうですよね?


 そこで、そのような事情のある介護施設の食事時に一番適しているBGM。

 それが

『ジャズ』

です。


 ジャズには優雅さの面からリラックス効果があります。

 しかし、曲調自体はとても速いため、食事速度は落ちないそうです。


 だからお洒落な飲食店では、リラックスしてもらいつつ、早く食べ終わって貰うためにジャズを掛ける事が多いようです。


 それでいて、お客の気分は決して害される事がない。


 まさに食事をする側と、食事を提供する側がウィンウィンの関係になる音楽こそ

『ジャズ』

なんですね。


 もし、特別なこだわり等がないのであれば、介護施設での食事時間にジャズを取り入れてみて下さい。




まとめ

 今回は、何となく先輩の姿を見て覚えてきただけの食事介助について、適切な情報を提供してきました。


 では最後に

『食事介助の基礎知識。適切な姿勢は?テーブルの高さは?『準備編』』

についてまとめて終わりにします。


 適切な食事の姿勢とは

◎、顔はやや下向き

◎、体はやや前傾

◎、足底は全面を床に着け、やや後方に引く


 テーブルとイスの適切な高さは

『椅子の高さ+座高÷3』


 食器の色は、

介護職員の目線ではなく、ご利用者からどう見えるか?で選ぶ。


 食事の際の音楽は

リラックスしてもらいつつ、それなりに早く食べてもらいたいならジャズ。


 これらのことはキチンと教わることがなくても普段は問題ありません。


 しかし、

「ご利用者が食事を食べなくなった。」

「最近むせやすい」

のように何かしら問題が発生した時に適切に対応できなくなります。


 そのように何か問題が発生した時の為にも適切な食事介助の知識も身に着けておきましょう。


 あとは、今回提供した情報を貴方の施設で実践するか、実践しないかは貴方の問題です。

 情報は行動しなければ、実践しなければ意味がありません。


 貴方は情報を活かす人ですか?

 情報を無駄にする人ですか?



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Posted by ふたひい