介護職員のための、事故報告書の適切な書き方とその目的。《事故報告書作成マニュアル》

2020年4月2日

※ この記事を読むのに掛かる時間は約11分です。

 介護現場の仕事と言え、案外書類作成業務は沢山あります。

 そんな介護現場の中で、常勤だろうと、パートだろうと、避けては通れない書類の一つに

『事故報告書』

があります。


 介護現場における事故報告書とは、

『ご利用者が怪我をしてしまう恐れがある出来事(転倒等)』

から

『実際に怪我をしてしまった(内出血、骨折等)』

場合に作成する書類です。


 介護職員の貴方が現場で事故を目撃してしまったり、事故を起こしてしまった時に書く時のポイントや書く目的を知っていれば焦らずに済みます。


 ただでさえ事故を見たり、起こしてしまって大変なのに、何度も事故報告書を書き直しさせられては疲れてしまいます。


 そうならないよう、しっかりと伝わる、意味のある事故報告書を作成できるようにしていきましょう!



介護現場での事故報告書

<介護現場での事故報告書とは?>

 冒頭でも説明した通り、介護現場での事故報告書とは

『ご利用者が怪我をしてしまう恐れがある出来事~怪我をしてしまった場合に作成する書類』

です。


 社会一般的には、交通事故や、仕事上のミス等をした際に作成し、その報告を職場にする書類も事故報告書と呼びますが、介護現場で

【事故報告書】

と言う場合には、ご利用者が転倒してしまった等の事実を記載する書類を指します。



<事故報告書を書く目的・意味>

 事故報告書の目的、書く意味は

《事故の再発防止のため》

です。


 同じ介護事故を起こさないようにするために、状況を報告書にして対策を検討するために使用する書類です。


 そのため、反省文や始末書として書くと意味がなくなります。

 この事については後半でもう少し詳しく説明します。


 なお、介護や看護現場で頻繁に言われている、事故報告書を作成するもう一つの意味。

職員の身を守るための書類』


 この部分に関しては、具体的にどう身を守るのか不鮮明なので、警察経験のある私が実際の犯罪捜査上、どのように活用され得るかを考えてみました。


「事故報告書でどのように身を守れ得るのか?」

に興味がある貴方はこちらの記事も併せてお読みください。

>>>『介護の事故報告書を書くと、どのように職員の身が守れるのか?元警察官が考えてみた』




事故報告書は誰が書く?

<詳細を知っている人が書く>

 介護現場での事故報告書で

「何を、どのように書いたら良いのか?」

を見て行く前に、必ず問題になる


誰が書くのか?問題

 これについて説明します。


 私の考えとしては

①、介護事故を起こした人

②、発見者

の順で書くべきです。


 何故そのように考えるのかと言うと、事故報告書を書く目的にあります。


 先程も言いました。

 事故報告書を書く目的は、

再発防止のため

です。


 再発防止のためには、少しでも詳細が分かる事故報告書の方が好ましいです。

 その方が適切な検討を行えますからね。


 そして、介護事故の状況を少しでも詳しく分かる人は、事故を起こした本人か発見者です。


 だから、事故を起こした人、又は発見者の順で書く必要があると考えます。


 ここでも忘れてはいけないことは、

《事故報告書は反省文ではない》

と言うことです。


 事故報告書は再発防止のための書類です。

 職員に反省を促したり、断罪するための書類ではありません。

 とても重要なので何度も言います。



<発生不詳の内出血は誰が書くの?>

 事故を起こした職員が書く目的はあくまでも、状況の詳細が分かるからです。

 事故を起こした反省をさせるためではないと言うことは明確にさせておきましょう。


 その上で、入浴介助時に偶然見つけた内出血等。

 この場合は誰が書いても情報量に差は出ません。


 この場合には介護事故を起こした人が特定できませんし、ご利用者本人が自分で作った可能性も有りますので、

《発見者》

が作成しましょう。


 施設によっては犯人探しが始まるのですが、そんな無駄なことは今すぐ止めましょう。


 何度も何度も言いますが、事故報告書を作成する意味・目的はあくまでも再発防止であって、反省させる目的ではありません。


 犯人探しなんかしても、再発防止に必要な情報量は増えません。

 つまり、再発防止目的の事故報告書業務において犯人探しは無意味な行為です。


 そんな無意味なことをするために職員が業務から抜ける余裕がある施設なのでしょうか?

 そして、いつから介護職員に捜査権が付与されたのでしょうか?


 更に、高齢者の内出血は数時間~後日出てくる事もあるため、内出血の原因を作ってしまった職員自身も本当に意識していない、気付いていない可能性もあります。


 そのため、原因不明の内出血に関しては、発見者が書くのが一番適しています。


 前置きが長くなってしまいました。

 では事項より、具体的な事故報告書の記載事項について話をして行きたいと思います。


 なお、各項目のポイントではなく、実際の記載例を知りたい貴方はこちらをどうぞ。

>>>介護施設における事故報告書の記載例『転倒』




事故報告書記載事項『介護事故発見職員』

 誰が発見したのかをキチンと書きます。

 発見した人にしか状況がわかりませんので、

《発見者=事故報告書作成者》

となるのが普通です。


 状況が分かる人が書かないと再発防止のために必要な情報が書けませんからね。


 なおここでの

《発見者》

には事故を起こした人も含めるのが一般的です。


 事故を起こしてしまい、その場で発見と言う意味合いですね。


 何度も言いますが、事故を起こした事を反省させる意図は含ませないで下さい。


 職員名はフルネームで記載しましょう。

 なお、職員の経験年数は施設によって判断して下さい。


 経験年数の違いによって再発防止案が大きく変化するなら記載して下さい。

 特に検討案に大きな影響が出ないなら不要です。


 事故報告書における経験年数記載の有無についてはこちらをお読みください。

>>>介護の事故報告書で裁判を意識するなら、経験年数記載は不要




事故報告書記載事項『介護事故の発生時間』

 事故を見たならその時間。

 事故を見ていないなら、発見時間にするのが一般的です。


 ご利用者によっては、決まった時間帯だけ活発に行動を開始する人もいますから、活動把握のためにも時間は重要です。


 活動時間を把握出来れば、再発防止のために職員が事前に動きやすくなりますよね。




事故報告書記載事項『介護事故の発生場所』

 発生場所としましたが、発見場所も含みます。


 居室のベッドからの転落なら、

「どの居室の、どのベッドか?」

も記載すべきです。


 なぜなら、重度の認知症者なら、必ずしも自分自身のベッドからの転落とは限りませんからね。


 実際に過去に私が経験した事故の例をあげると

 男性ご利用者が、女性のご利用者を自分の奥さんだと勘違いし一緒のベッドに寝ようとして、女性が男性を突き飛ばし転倒。


 この場合は、居室も、ベッドも男性ご利用者本人のところじゃないですよね?


 本人のベッドからの転落と、このようなケースでの転倒・転落とでは対策も違ってきます。

 そのため、再発防止を検討する上で、場所もとても重要です。




事故報告書記載事項『介護事故のご利用者名』

<ご利用者は一人一人違う>

 ご利用者一人一人身体状況は違います。

 精神状態も違います。

 誰がそのような介護事故に遭ったのか?はとても重要です。


 ベッドからの転落だけでも、一人一人に合った事故防止対策が必要なんですよね。

 そのためにも、誰の事故かをハッキリさせておくことが重要です。



<イニシャルにするか、フルネームにするか>

 事故報告書にご利用者のことを記載する際、悩みどころの一つとして

「イニシャル記載にするか、フルネーム記載にするか?」

と言う問題があります。


 個人的にはフルネームで書くべきだと思います。

 再発防止対策をキチンと行うためにはフルネーム記載が必要です。


 確かに施設職員ならイニシャルだけでも誰だか分かります。

 しかし、イニシャルだけでは現場を良く知っている職員以外には分かりません。


 現場を良く知っている職員でも、同じイニシャルのご利用者がいる場合には、どちらのご利用者か悩む場合もあります。


 誰だか分からない表記で、適切な事故防止対策を検討することは不可能です。


 そうなると再発防止案が

『転倒事故=見守りの強化』

のように、いつも決まった対策が流れ作業として決まっていくだけになります。


 それでは事故報告書を作成する意味が弱くなります。

 無意味とまでは言いません。


「その検討が本当に適切かどうか?」

をより幅広く検討するためにはフルネームで記載する必要があります。


 事故報告書は再発防止のための書類ですので、その目的を達する為に、私はフルネームで書くべきと考えます。


 余談ですが、何故事故報告書の意味を弱めてまでイニシャルにしたがる人もいるのか?

 それは、情報公開の対象として危惧しているからです。

 要は個人情報云々の話です。


 この部分に関して、私の見解は

『そこまで気にする必要はない』

です。


 情報公開申請で公開する時には個人名部分は黒塗りに出来るので、イニシャル表記にするメリットはないためです。


 書類そのものを、そのまま外部の人間の目に入るような形で保管しているなら話は別ですが。


 この辺りは個人情報保護法をキチンと勉強して、より効果的な事故報告書の運用が出来ると良いですね。




事故報告書記載事項『介護事故の状況』

 何があったのか分からなければ検討のしようがありませんので、一番重要な部分です。

 しかし、ここの書き方が一番難しいんだと思います。

 そこで、どのような内容を、どのように書けば良いのか?順を追っていきたいと思います。



<転倒事故の書き方>

 見守る担当の職員が食堂の片付けでテーブルを拭いていると、ドンと音がして振り返るとご利用者が転倒していた。

 こんな状況は良くありますよね。

 こんな状況を書く場合、どんなことを、どのような書き方にすれば良いのかを見て行きましょう。



<事故前の状況>

 もしわかるのであれば、事故前の状況を書きましょう。

 転倒したご利用者の体動は活発だったのか?

 それとも、落ち着いていたのか?

 眠そうにしていたのか?

等々ですね。


 活発だったのなら、対策として放置しちゃダメと言う方向性で検討できます。

 眠そうにしていたなら、眠くて脱力し、ずり落ちた可能性もあるので、また検討内容が変わってきますよね。



<発見時の状況>

 右側を下にしているのか?

 左側を下にしているのか?

等は基本です。


 それによって倒れ方や殴打した場所等の推測ができます。


 他にも

◎ 椅子は倒れているのかどうか。

◎ 椅子の座布団は落ちているかどうか?

◎ 車いす使用者なら、車いすの位置は?

◎ 車いすのブレーキは掛かっていた?

◎ 車いすのフットサポート(フットレスト)は上がっていた?下がっていた?

◎ ご利用者がゴミ等、何か持っていないかどうか?

等々。


 見たままの状況を書きます。

 この部分には推測を入れない方が良いです。

 客観的事実だけを記載するわけです。



<ご利用者の文言>

「どうしたのですか?」

等質問をしましょう。


 キチンと受け答えが出来るご利用者なら、転倒理由が聞き出せます。

 キチンと受け答えが出来ない方でも、何かヒントは得られるかもしれません。


 これも客観的事実として、何と発語があったのかそのまま記載した方が良いです。

  ご利用者本人からの発言では何も判明しないとしても、文言をそのまま記載しましょう。


 その場合は

《何故倒れたのか質問するも「あぁ~。お~」とのみの発語であり、状況詳細は判明せず

のように書いておけば良いだけです。


 あくまでも客観的事実が重要です。



<赤み・外傷>

 転倒状況からある程度どの部分を殴打したのか推測は出来ます。


 出血の有無、たんこぶの有無、内出血の有無、赤みの有無、痛みの訴えの有無等を確認します。


 高齢者だと数時間経ってから内出血が出てくることもありますが、その時点での状況を確認して記載しましょう。


 これもその時点での客観的事実の記載です。



<バイタル>

 体温、血圧、脈、酸素飽和度

 これらは基本です。


 体調不良が原因でふらつき転倒した可能性もありますし、転倒によって体の内部に何かが起きてしまっている可能性もあります。


 そのため、バイタルは重要です。


 通常、転倒直後は血圧と脈は大きくなります。

 医務がいるなら医務指示を仰ぐのが普通です。


 医務がいないなら、30分後に再度測定しましょう。

 それでも血圧等が落ち着かないなら、何かあると疑うべきです。




事故報告書記載事項『介護事故が発生した原因』

<客観的事実で記載する>

 何故その事故が発生したのか?


 これが分からないとキチンとした方向性の検討が出来ませんので、何故事故が発生したのかも重要な記載事項になります。


 先ほどの転倒を例にするなら

《一人で立ちあがり、バランスを崩して転倒》

《車イス上で眠気が強く、体がずり落ちて転落》

のような感じですね。


 ちなみにこの部分は、発見者も事故発生時は見ていないなら推測が入ることもあります。

 前項の

『事故の状況』

では推測は絶対に入らないので、少しややこしいかもしれませんね。


 発生原因に推測を入れるケース。

 それは事故を見ていないで、床に倒れている状況だけを発見した等の状況のときです。


 書類に記載するなら

《一人で立ちあがり、バランスを崩して転倒したと思われる》

《車イス上で眠気が強く、体がずり落ちて転落したと思われる》

となります。



<事故報告書は反省文ではない>

 この部分は特に反省文として記載する職員が多い部分です。

 事故報告書は反省させるための書類ではなく、再発防止のための書類です。


 言い方は少し強いかもしれませんが、反省の文言を書かれても邪魔なだけです。


 多くの職員さんは、発生原因をこのように書くんですね。

《職員の見守り不足によって気付かずに転倒したと思われる》


 これでは反省文です。

 事故報告書ではありません。


 更に、このような書き方では

「見守りが足りなかったことが原因と言われたら、見守りを強化しましょうとしか言えないじゃん!」

となってしまうので、再発防止検討の邪魔になるんですね。


『必要ない』

ではなく、

『邪魔』

になるんです。


 例に挙げたように

「職員がこうすべきだったのに、こうしていなかったから発生した」

のような書き方はしないように心がけましょう。




事故報告書記載事項『再発防止の対策』

 ここまでに書いてきたことを踏まえて、どうすれば同じような事故が防げるのかを書きます。


 もちろん、それを参考に対策委員会で決めるのですが、報告書段階で発見者の意見として対策案は入れておくべきです。


 今回の例題で言うなら、テーブルを拭くと言う業務よりも、転倒リスクの高いご利用者の見守り・付き添いを優先した方が良かったかもしれません。


 もしそのような状況だったのに、テーブル拭きを優先してしまっていた場合は、その職員はご利用者のADLが把握できていなかったのかもしれません。


 それなら対策は、見守りの強化よりも、ADLの把握を徹底する方が有意義かもしれません。


 もし職員が充実している時間帯の事故なら、他の職員との声掛け・連携も対策としては有りですよね。


 介護職員が一番書きがちな

【見守りの強化】

と言う抽象的な対策よりも、このように、具体的な行動を示せるとより良いですよね。




その他

 ご家族への連絡等、書式によっては細かい事項もあります。


 しかし、それは相談員等がやるべき部分であり、現場の介護士がすべき部分ではありません。


 それを現場職員にやらせてしまったら、負担があまりに大きくなり過ぎてしまい懲罰的意味を持ってしまいます。

 それでは始末書と同じように、職員は事故を見て見ぬふりをすると思います。


 それだけは避けなければなりません。

 事故だけでは済まず、事件になってしまい得ます。


 家族への報告等の項目があっても、現場の介護職員が連絡するような形を取っている施設は今すぐやめる事をオススメします。


 何度も、何度も言いますが、事故報告書は再発防止のための書類です。

 職員への懲罰的な意味合いを持たせてはダメです。




「事故報告書は始末書ではありません!」

それ違う!

<反省する書類にすると意味がなくなる>

 今まで何度も、何度も言って来ているので

「もういいよ。わかったよ」

と感じるかもしれませんが、重要なのでキチンと説明します。


「事故報告書は反省文、始末書ではありません。」

 しかし、始末書とか反省文として書いている職員がとても多いのが現状です。


 事故報告書が始末書になっていた場合、本来の目的を果たせなくなってしまいます。

 だから、反省文としての意味を持たせては絶対にいけないんです。


 反省文や始末書として書かれている事故報告書は、全部

《本来の意味をなさない書類》

なので、本来は全部書き直しです!



<発見者が悪者になってはいけない>

 本来の事故報告書としての意味をなさない。

 これだけならまだいいんです。


 事故報告書に懲罰的な意味合いを持たせた時に、一番悪い影響というのが、

『職員が見て見ぬ振りをするようになる事』

です。


 貴方の施設では、発見者が悪者扱いになっていませんか?

「なんか自分が悪いみたいで事故報告書を書きたくないんだけど」

という雰囲気はありませんか?


 もしそのような雰囲気が出来てしまっていると、職員は事故を見て見ぬふりするようになります。 


 事故報告書に反省の意味も持たせてしまうと、本来の目的を果たせないだけではなく、職員が事故を報告しなくなって、秩序が壊れ始めます。


 これは、職員のミスによって発生した事故でも、事故報告書に反省の意味を持たせてはいけません。


 重要なので何度も言います。

 事故報告書は始末書にしてはいけません。


 そのため反省の弁は絶対に入りません。

「すみませんでした」

「こうすべきでした」

のような言葉は絶対に入りません。


 もしも、そのような言葉が入る事故報告書があったら、責任者は書き直しをさせて下さい。

 その発見者は事故報告書を理解していませんから、受け取った責任者はキチンと教えてあげましょう。

 もっとも、その責任者が始末書扱いしていたら話になりませんが。




最後に

 介護職員の中には文章を書く事が苦手だったり、その意味を教えられていないまま何となく書いている人も多くいます。


 そのため、新人介護職員に教えるべき先輩介護職員も詳しく知らない状況。

 何のためにそれを書き、そのためには何が必要なのか?

 そのくらいは知っておきたいものですよね。


 必要以上に怖がる必要はありませんが、介護の世界にいるなら事故報告書については知っておいて下さい。



 更に具体的な、事例ごとの記載例を知りたい貴方は続けてこちらをお読みください。

>>>介護施設における事故報告書の記載例『転倒』



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