介護士が知っておくべき遺言書の知識・書き方
遺言書
遺言書とは、広い意味では
【故人が死後のために遺した意思や言葉の文章】
を指します。
しかし、通常は財産に関しての意思表示としての意味合いが強い傾向にあります。
広い意味での遺言書、つまり、
「健康に気を付けて生きろ」
みたいな内容だけなら、自由に書いて問題ありません。
しかし、財産の分配等、物の権利が動くような遺言書の場合には自由に書いた遺言書では無効とされてしまいます。
今回は財産等、権利が動く遺言書が有効とされる作成方法をご紹介します。
件名を
【介護士が知っておくべき】
としたのは、認知症の方が書く方法をご紹介する事と、私に遺言に関する知識があったことでご利用者を守れた経験があるためです。
認知症の方の遺言書を作成する場合は介護士の協力は必要ですし、遺言書作成の場面で不正が行われそうな場合、ご利用者を守れるのは介護士です!
是非知っておいて下さい。
遺言書のルール
有効な遺言書について話をしていく前に、遺言書全般における共通ルールを見ていきます。
<遺言を残せる年齢>
15歳以上の者は単独で遺言をすることが出来る。(民法961条)
自分の意思をキチンと持っている者として15歳を一つの区切りにしているんですね。
現代ではあまり15歳が遺言をするなんて場面がイメージ出来ないかもしれませんが、現在の民法が施行されたのは戦後間もない時代です。
15歳でも遺言をするのは時代に合っていたモノと思われます。
靖国神社の遊就館には世界大戦時に戦死された少年達の遺書が展示されていますよね。
<遺言の変更等>
遺言はキチンと法律通りに作成した物であれば、何度でも書き換えが可能です。
更に、複数の遺言書があり、同じことについて矛盾し合っている場合。
後から書いた遺言書が有効となり、古い方の遺言書は無効とされます。
<遺言の内容>
法律に規定されている内容以外のことは無効となります。
ただし、これはあくまでも法的には無効と言うだけで、遺された親族が故人の意思を尊重することは自由です。
有効な遺言書
先述したように、遺言書は何でも書けば良いと言うモノではありません。
キチンと法律(民法)に規定された通りに書かないと無効なんです。
「私は民法なんて法律の内容を知らないです」
と言う貴方のために、私が今からご紹介します。
有効な遺言書の作成方法は幾つかありますが、普通は2種類だけです。
今から紹介する2種類のどちらかを選択して作成して下さい。
自筆証書遺言
遺言書のイメージとしてはこれが一番強いかと思います。
<作成者>
本人
<必要な記載事項>
- 遺言の全文
- 正確な日付
- 氏名(フルネーム)
- 押印
<書き方等>
必要な記載事項を本人が全て記載する方法です。
正確な日付と言うのは、【末日】等とせず、【31日】のように記載しないと無効と言う意味です。
この方式は自身で文書をキチンと作成出来る人に向いています。
ただし、死後に遺言書が発見されないと意味がないので、保管場所には注意が必要と言う欠点もあります。
公正証書遺言
<作成者>
公証人
<作成方法>
- 2名以上の証人を立会人として準備する
- 口頭で公証人に遺言の内容を告げる
- その内容を公証人が筆記する
- 公証人が筆記内容を遺言者と証人2名に読み聞かせる
- 各自全員が読み聞かせを受けたと署名押印する
- 公証人が署名押印する
※ 遺言者が署名出来ない場合は、公証人がその旨を記載し、署名に代えることが可能。
【その他】
こちらの方が色々と難しそうですが、ほとんどを公証人がやってくれると言うことです。
一人で法律に決められている方法で書く自信がないとか、手が不自由で書けないとか、保管場所が決まらない等の人はこちらの公正証書遺言を選択した方が確実だと思います。
手が不自由でも公証人が書いてくれますし、公正役場で作成するので、そのまま公正役場に保管できます。
ネックなのは、証人2名を用意する部分くらいですかね。
認知症の人の遺言書作成方法
認知症としたのですが、厳密には成年被後見人の遺言書作成方法になります。
成年被後見人と言うのは、別記事として詳細に書くつもりですが、簡単に言うと
【物事を判断できない状態の人で、「保護しましょう」と裁判所から認定されている人】
のことです。
そのため、物事を判断できない認知症の人と言うだけではこれに該当しません。
裁判所から認定されていないと成年被後見人ではないんですね。
とは言え、施設入居者の中にはこの、成年被後見人認定されているご利用者もいますので、是非知っておいて下さい。
(ちなみに、成年被後見人について知っておいて損はないですし、介護福祉士・社会福祉士の試験範囲ですよ!)
【作成方法】
法定されている方法。
つまり、自筆でも、公正証書でも、どちらでも大丈夫です。
【準備等】
◎ 一時的に物事を判断できる状態になった時に作成可能。
◎ 医師2名の立ち会いが必要。
認知症のご利用者でも、いきなり繋がることがありますよね?
「○○さん、今日は会話のキャッチボールがしっかり出来たよ!」
なんて時ありますよね?
そんな時なら自身の意思をシッカリと言えるかもしれませんよね?
その時なら医師2名以上の立ち会いがあれば、遺言書を残せると言うことです。
ただし、自筆証書遺言の場合にはご利用者自身が全ての文章を書かないといけません。
普通に考えて難しいと思いますので、この方法で遺言書を作成する場合には、公正証書遺言が選択されるケースがほとんどかと思います。
ご利用者がいつ繋がるかわかりませんので、前もって嘱託医等とは遺言書を作成する際の協定や取り決め、システムの構築等をしておく必要があると思います。
更に、公正役場に行かないといけませんので、送迎も早く出来るように体制を整えておく必要がありますね。
相続欠格
遺言書と直接関係はないのですが、相続出来ない条件と言うモノを最後に言っておきます。
と言うのも、介護施設内において、実際に私は相続欠格に該当し得る行為を目撃してしまった経験があるからです。
私はこの知識があったから、その時にご利用者を守れました。
つまり、この知識がなければ守れなかったと言うことです。
そのため、介護士には是非知っておいて欲しいと思いご紹介します。
<相続欠格とは?>
相続欠格とは、
【相続人の中で、法律上当然に相続できない者】
の事です。
ちょっとイメージし難いかもしれませんが、要は
「こんな奴に相続させる必要はない!」
と法律が言うくらいに悪い人のことです。
<相続欠格者>
次の項目に該当する者が相続欠格者です。
- 相続に関して人を殺害した者
- 詐欺・強迫等により相続に関する遺言書を作成させた者
- 遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
<私が目撃した事例>
そのご利用者の家族は普段面会はしていない家族でした。
ある日突然面会に訪れました。
居室でお話をしていた様子でした。
何気なく居室前を通った時にこんな会話が聞こえてきました。
「いいから早くここに名前を書いて!それだけで良いから!」
「他は全部私の方でやっておくから。遺言を今のうちに書いておかないと書けなくなっちゃうかもしれないでしょ。早くしてよ!」
のような内容でした。
これは相続欠格の、詐欺(騙す)等によって遺言書を作成させる行為ですよね。
立派な相続欠格行為です。
以前勤務していた施設なので、既に退職した施設ですが、今でもそのご利用者の氏名、居室の位置まで覚えています。
その親族は悪い行為だと認識があったのか、私はワザと
「カーテンを閉めに来ました」
とその場に入り、普段の施設での状況を説明すると言う口実で話をし始めたら、不正の遺言書を完成させられずに帰って行きました。
このように、介護士は相続・遺言についての知識があるか、ないかでご利用者を守ることも可能な立場なんですね。
是非知っておいて下さい。
最後に
いかがでしたか?
遺言書作成について
「法律通りにと言う割には結構簡単じゃん」
と思いましたか?
それとも
「・・・いまいち良くわからない」
となりましたか?
どちらにしても、遺言をするためには保管場所とか、便せんや封筒をどうするか?とか色々と準備が必要です。
そこで、遺言書の書き方のレクチャー付きの、遺言書作成キットと言う物をご紹介して終わりにしたいと思います。
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等も宜しくお願いします。
【遺言書作成キット】
遺言書の作成方法から保管方法までアドバイスをしてくれます。
更に作成キットの一式も付いています。

【エンディングノート】
エンディングノートと言うのは、遺言書のより細かい物と言うイメージをして下さい。
遺された親族が相続をする時には故人の財産全てを調べ上げたり、葬式の連絡をどこに出すか等交友関係を調べたり、とても大変です。
その辺りのことを前もって全部書いておくことで、遺族の負担を減らす事が出来ます。
そのためエンディングノートは遺族の負担を減らすための優しいノートと言うことです。
その分、作成する自分自身は大変ですけどね。
